研究課題/領域番号 |
26463422
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
堀田 法子 名古屋市立大学, 看護学部, 教授 (90249342)
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研究分担者 |
山口 孝子(久野孝子) 名古屋市立大学, 看護学部, 講師 (90315896)
安本 卓也 椙山女学園大学, 看護学部, 講師 (50566099)
二宮 昭 愛知淑徳大学, 文学部, 教授 (60132924)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 患児 / 看護師 / コミュニケーション / 侵襲処置 |
研究実績の概要 |
第一研究として、処置時の発話内容を処置前、中、後の時期別に比較し、各時期の傾向と課題を明らかにした。対象は、2歳から9歳、調査方法は、処置室入室から退出までのビデオ撮影による非参加観察法で、処置内容は主に点滴ルート確保である。分析方法は、ビデオ映像から遂語録を作成し、1発言中の同一の意味内容を1発話として単位とし、発話数は単位分当たりで分析した。遂語録は妥当性を担保した。発話の意味する内容ごとにカテゴリーを作成し(9カテゴリー、23サブカテゴリー)、一分間あたりの発話数を算出した。結果は28事例を分析対象とした。総発話数は、医師は処置中に多く(p<0.05)、患児は処置前と中に多くみられた(p<0.01)。しかし、看護師の発話数は多く、時期による差はみられなかった。医師は要求・指示とその他が処置前に、肯定と説明が処置中に多かった(p<0.05、p<0.01)。看護師は否定、要求・指示が処置前に多く、肯定が処置中に、説明は処置後に多かった(p<0.05)。子どもは否定が処置前と中に多く、感情が処置中に多かった(p<0.01)。第二研究として、事例を通して処置中の患児と医療者の相互交渉の特徴を質的記述的に分析し明らかにした。抽出された特徴は妥当性の向上に努めた。結果は、対象12事例19場面を分析し、6つの特徴が見出された。【患児の希望を確認し、できる限り希望に応じて処置を進めることで拒否が少ない】【患児の言動に対し、誉め続けることで頑張る気持ちを持ち続けられる】【患児は処置に混乱しているとき、質問に答えることは難しい】【患児に合った気持ちを高める遊びの工夫を行うことで、処置に前向きになれる】【頑張ろうや大丈夫といった言葉だけの励ましでは、処置に前向きになれない】【様々な場面で患児は目と耳で処置の状況を把握しようとしている】が抽出された。26年度は2回の学会発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
小児看護学では、痛みを伴う侵襲処置時に看護師は言語・非言語的コミュニケーション(相互交渉)を駆使して患児と向き合っている。応募者は、点滴ルート確保場面の発話分析(発話を分析単位)から、看護師、医師、保護者、患児の発話は9 カテゴリー24 サブカテゴリーに分類され、看護師、医師、保護者、患児の発話に特徴があること、および保護者同席の有無で発話に相違があることを明らかにした。さらに本研究では、看護師、医師、保護者の発話に対し、患児が受け入れた発話と受け入れない発話、および患児の発話に看護師が対応した発話を明らかにし、看護師の具体的なコミュニケーションスキルを検討・介入計画立案・介入・修正を繰り返し、痛みを伴う侵襲処置時の看護師のコミュニケーションスキルの開発を行うことを目的としている。現在は、各事例から、看護師、医師、保護者の発話に対し、患児が受け入れた発話と受け入れない発話、および患児の発話に看護師が対応した発話を分析し、6つの特徴【患児の希望を確認し、できる限り希望に応じて処置を進めることで拒否が少ない】【患児の言動に対し、誉め続けることで頑張る気持ちを持ち続けられる】【患児は処置に混乱しているとき、質問に答えることは難しい】【患児に合った気持ちを高める遊びの工夫を行うことで、処置に前向きになれる】【頑張ろうや大丈夫といった言葉だけの励ましでは、処置に前向きになれない】【様々な場面で患児は目と耳で処置の状況を把握しようとしている】が見出せ、学会は発表が終了し、論文執筆に取り掛かっているところである。看護師の具体的なコミュニケーションスキルの介入計画立案の前段階である。現在の分析結果をもとに、介入計画を立案していく予定であり、計画通り順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
侵襲処置35 場面のビデオ映像から、9 カテゴリー24 のサブカテゴリー分類をもとに、看護師、医師、保護者の発話に対し、患児が受け入れている発話、受け入れない発話、さらに、患児の発話に対して看護師の対応した発話が望ましい対応かどうかを発話の文脈ごとに検討した結果を基に、患児が受け入れる発話や、看護師の望ましい発話対応について、看護師の具体的なコミュニケーションスキルを、研究協力者である病棟看護師、心理学の専門家、とともに検討し、介入計画を立案する予定である。介入計画立案後には、検討した具体的コミュニケーションスキルを用いて、研究協力者である看護師2 名が実際に点滴ルート確保時に介入する(保護者同席、非同席 各10 場面)。研究協力者の病棟看護師を含め、医師、患児、保護者を観察対象に、点滴ルート確保を行う処置室入室から処置室退出までの言語的・非言語的コミュニケーションについてビデオ撮影による非参加観察法を行い、撮影された映像から遂語録、トランスクリプトを作成し、介入した場面について、発話を9 カテゴリー24 のサブカテゴリーに分類し、介入結果の問題点の検討・修正を繰り返し行い、痛みを伴う侵襲処置時の看護師のコミュニケーションスキルの開発を行う。次年度から小児看護経験が豊富な研究分担者を2名増やすことで、質的研究部分の分析の信頼性が高まり、さらに研究の進度についてもさらに進展すると考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
侵襲処置35 場面のビデオ映像から、9 カテゴリー24 のサブカテゴリー分類をもとに、看護師、医師、保護者の発話に対し、患児が受け入れている発話、受け入れない発話、さらに、患児の発話に対して看護師の対応した発話が望ましい対応かどうかを発話の文脈ごとに検討した結果を基に、患児が受け入れる発話や、看護師の望ましい発話対応について、看護師の具体的なコミュニケーションスキルを検討している。場面数が35場面であり、予定の40場面が追加できず、ビデオ撮影後の遂語録の作成についての謝金が使用できなかったため次年度使用額が生じた。ビデオ撮影後の遂語録の作成については初回は謝金を用いて研究補助者に作成してもらい、その後は研究者で確認作業を行っている。
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次年度使用額の使用計画 |
これまでの成果に基づいて、介入計画立案を行い、侵襲処置場面の観察を継続していく予定である。
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