研究実績の概要 |
本研究の目的は医療機関において虐待あるいはその疑いのある家族(以下,不適切な養育の家族とする)に対して積極的な子育て支援ができるよう,子どもに関わる病棟および外来の看護師(以下,小児看護師)のための学習プログラムを作成し,その効果を測定することである。 平成30年度は,平成28年度および平成29年度に実施した学習会プログラムの効果を測定するため,学習プログラム前後に行った質問紙調査の結果を分析した。参加者は延べ120人で,質問紙は65名に配布し有効回答数は29名,有効回答率は44.6%であった。参加者の54.0%が病院の看護師であり,その他,訪問看護ステーションや保健センターの看護職および大学院生であった。看護師としての経験年数は1年から32年目までとばらつきがあった。学習プログラム実施前より後のポイントが上昇したのは「不適切な養育の家族に積極的に関わる」「他病院での子育て支援の方法を知りたい」「不適切な養育の子どもと家族の行動を観察する」「親の養育の困難さを理解したい」「子どもの行動の意味を理解しようとする」「不適切な養育の子どもと家族に関わる時間がある」「医療と保健の情報共有と連携は簡単でない」の項目であったが,有意差はなかった。自由記述では,「看護師と母親としての視点から不適切な養育の家族への関わりを考えることができた」「家族を否定的に見るのではなく,家族のありのままを受け入れようと思えた」「他病院からの参加者と話し合いを通し,自分の病院でもできる新しい発見があった」などの記載があった。 以上より,学習プログラムにより認識の変化はみられたものの,有効性は検証できなかった。前後調査の結果に有意な差がみられなかった要因として,受講者の経験年数の幅が大きくニーズに違いがあること考えられた。受講者の経験年数や習熟度の違いに応じた学習プログラムを検討する必要性が示唆された。
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