研究実績の概要 |
平成27年度は,不妊治療後に妊娠・分娩した産後1ヵ月の母子相互作用を調査し,不妊症治療が母子相互作用に及ぼす影響について検討した。 対象は,不妊治療後に妊娠・分娩後で同意を得られた母子で,遊び場面38組,授乳場面27組であった。1ヵ月健康診査時に評価尺度Japanese Nursing Child Assessment Satellite Training(JNCAST)に基づき,授乳場面および遊び場面をビデオ録画し,母子相互作用を評価した。母親へは,ビデオ録画の際に3尺度(育児動機,愛着,育児不安)で自記式質問紙調査を実施し,母子相互作用と母親の主観的評価を比較した。データの分析は,平成26年に自然妊娠後の産後1ヵ月の母子相互作用結果とF検定で比較し,不妊症治療後の母子相互作用の特徴を明らかにした。 その結果,不妊治療後の産後1ヵ月の母子相互作用は,遊び場面および授乳場面の総合計得点ともに自然妊娠と比べ低く,有意差が認められた(p<.006,p<.004)。また,両場面ともに母親下位尺度「社会情緒的発達の促進」が低く,有意差が強く認められた(p<.001, p<.001)。母親の主観的評価を自然妊娠と不妊治療別に比較した結果,不妊治療後の母子は,育児動機が低く,有意差を認めた(p<.05)。 以上のことから,自然妊娠と比較し不妊治療後に妊娠・分娩した産後1ヵ月の母子相互作用は低く,とくに母親の社会情緒的発達の促進が低いことが明らかとなった。又,母親は育児動機が自然妊娠と比較し低いことも明らかとなった。 平成28年度は,母子相互作用を促進するプログラムを開発し,介入後の母子相互作用を比較・評価するパイロットスタディを実施する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成27年度の研究計画は,不妊治療後の母子と自然妊娠の母子相互作用を比較し,不妊治療後が母子相互作用に及ぼす影響を検討すること,検討した結果,母子相互作用を促進するプログラムを開発することであった。 しかし,平成26年度で終了する予定であった対象である不妊治療後の母子から同意を頂くのが難しく,データ数不足により半年研究期間を延長した。現在,介入プログラムを開発している段階で,若干予定よりも遅れているが,平成28年度は,介入プログラムを実施する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度の計画として,データ数不足のため不妊治療後妊娠・分娩した産後1ヵ月の母子相互作用のデータ収集期間を延長したため,介入プログラムの開発が若干遅れており,プログラムに必要な指導教材の経費を使用していないために使用額が予定より減少した。そのため,未使用額が生じた。
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