研究実績の概要 |
本研究の目的は助産師を対象にした非薬物的方法(マッサージなど)による産痛緩和ケア教育プログラムの効果とケア習得過程を明らかにすることである。対象者は産痛緩和ケアが基礎教育や臨床で実施されていないモロッコ国の助産師である。教育プログラムの効果に関する指標は、受講した助産師のケアへの意識とケア実践頻度の変化、プログラムを受けた助産師にケアを受けた産婦による評価、産科学的アウトカムである。ケア習得過程は、ケアの習得・実践の経過に伴う助産師の言動から分析した。産痛緩和ケアプログラムは平成27年11月から12月にかけて5回実施した。評価はプログラム参加前、プログラム終了後1ヵ月後、3ヵ月後、6ヵ月後、9ヵ月後、12ヵ月後に実施した。対象者は23名である。対象者の平均年齢は29.8歳(SD=4.6)、助産師経験平均年数7.5年(SD=3.3)、勤務施設は大学病院6名、県病院10名、分娩施設付保健センター7名であった。月の平均分娩介助件数は21件以上が13名(56.5%)と最も多かった。産痛緩和について学習経験がある者は2名(8.7%)だった。臨床実践で産痛緩和実施経験がある者は8名(34.8%)であり、内訳は呼吸法(8名)、マッサージ(4名)、温罨法(4名)などだった。23名中、16名がプログラムに完全参加できた。終了後12ヶ月において14名に接し質問紙を回収しインタビューを実施した。助産師の産痛緩和ケアへの意識はプログラム参加前に比較し終了後12ヶ月に有意に高かった(t(13)=-2.31, p<.05)。ケア実践頻度もプログラム参加前に比較し終了後12ヶ月に有意に高かった(t(12)=-3.11, p<.05)。産痛緩和ケア習得へのプログラムの効果が認められた。一方で分娩件数が非常に多い勤務形態や所属組織の文化がケアへの態度や実施頻度に影響していることが示唆された。
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