研究課題/領域番号 |
26463444
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
眞壁 幸子 秋田大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (40436184)
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研究分担者 |
藤田 君支 九州大学, 医学研究院, 教授 (80315209)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ライフスタイル / 全人工股関節置換術 / 高齢者 / Quality of Life / 身体活動量 |
研究実績の概要 |
本年度は、高齢者の生活リズムの検証を日本とタイ王国との共同研究で行い、その他に、身体活動量尺度であるE-SQUASHを開発して信頼性・妥当性を検証した。また、人工股関節術を受けた患者の寒冷による痛みの影響についても検証した。以下にそれぞれの検証結果を記す。 高齢者の生活リズムの検証を日本とタイ王国との共同研究では、タイ王国のチェンマイ大学とスラナリー工科大学、そして秋田大学が研究期間となり、地域に暮らす高齢者の生活リズムをアクティウォッチにて計測した。季節による影響を考慮して、時期は、日本では、春、夏、秋、冬の4回、タイ王国では、暑期、雨期、乾期の3回であった。タイ王国の乾期を残してデータ収集を終えている。各国において、35名程度の高齢者の参加者があった。これまでの分析では、タイ王国では、季節が変化しても生活リズムは安定しいる反面、日本では、夏と冬とで、生活リズムがバランス悪くなり、睡眠の質などにも影響していることが明らかになっている。今後、データ収集を終えて最終分析・論文投稿を行う予定である。 E-SQUASHの開発では、秋田県のスポーツ整形医学のリーダーとともに、もともと高齢者に信頼性・妥当性が認められている身体活動量尺度(著者が開発)を電子化した。この電子化により、回答時の記入漏れやデータ入力の簡略化、将来的なメガデータへの対応が可能になった。もともとの紙媒体の尺度との比較により妥当性が認められている。信頼性は再テスト法にて現在調査中である。今後は、データの蓄積を目的に、様々な対象に回答してもらい、高齢者だけでなく年代別の身体活動量をデータベース化したいと考えている。 人工股関節術を受けた患者において冬期間の寒さにより痛みを生じている患者が存在することがわかった。今後は、地域の違いによるライフスタイルの違いや、寒冷地による違い、対策の違いを検証する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね順調であるとした理由は、当初予定していなかった研究の発展があったが、結果的に進展しなかった経緯もある。以下に内容を記す。 国際共同研究においては、各研究施設においての倫理審査が必要なため、倫理の結果を得るまで時間を要した。また、アクティウォッチの不具合があり、データ収集に時間がかかるなど、様々なトラブルが生じた。しかし、綿密なメールでのコミュニケーションや、定期的な(月1回)のWeb会議により、互いの理解を深めて、問題解決を早期に解決するように行った結果、データ収集がもうじき終了するところまでたどり着くことが出来た。これらの共同研究者とは現在、新たなプロジェクトも開始しており、信頼関係が築けてきている。今後も、継続的に共同研究を進めていく予定である。旅費がかかるため、多くの研究者をタイ王国にフィールド調査(現地の高齢者の見学)に送ることはできなかったが、本研究資金で、1名の共同研究者を送ることが出来たことは有意義であった。 E-SQUASHは、学会発表などにより、多くの研究者などに興味を持ってもらえた。その中でも、秋田県男鹿市教育委員会にも、本尺度が学童期に使用できないかとのオファーもあった。しかし、もともとSQUASHは成人を対象として開発されたことから、打ち合わせを何度が行った結果、やはり学童期に使用するには難しいと判断しなければならなかった。秋田県は、スポーツ人口割合が全国ワースト2位、肥満児の割合も全国ワースト2位と課題が山積している県である。この県で、大人になってからの介入でなく子供のうちから身体活動量改善の関わりが出来ることが望ましいと考えるが、本研究では、E-SQUASHに限っては、子どもを対象とするにはまだ課題があるのが現状である。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究結果と、今後の研究計画を洗練するために、再度、「人工股関節患者のライフスタイルの違いや豪雪寒冷地による影響と対策ツールの開発研究」に関する文献レビュー・情報収集を行い、本研究課題を系統的に検証していく。詳細な研究内容を以下に記す。 日本とタイ王国との共同研究である高齢者の生活リズムの検証において、論文投稿を行う。またその結果を、協力してもらった地域の高齢者にわかりやすい表現に変えて、フィードバックを行う。その際に後でも読み返せるようにパンフレットも作製する。また、共同研究施設において研究セミナーを開催して、多くの研究者に研究成果を伝える予定である。さらに、秋田県に対しても提言を行えるよう計画する。 E-SQUASHにおいては、メガデータを蓄積できるようにさらに整備して、高齢者のみにとらわれるのではなく、様々な年代での身体活動量のデータベース化が出来るように取り組んでいく。さらに、テクノロジーを利用して、簡便にフィードバックできるようにシステムも検討していく。患者のデータも蓄積できないか検討していく。 最終的には、人工股関節患者のライフスタイルの違いや豪雪寒冷地による影響とその対策ツールに関係する全国調査を行い、これまでの研究結果を踏まえて、統合的に解決策を検討することとする。
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次年度使用額が生じた理由 |
国際共同研究において、倫理審査の手続きに時間がかかったことや、研究ディバイスの不具合により、データ収集に時間がかかった。これらの対処を行うために、全国調査に取り掛かることができていない。結果的に、全国調査のための資金が残っている。また、E-SQUASHの開発にも取り組んだこともあり、使用していな資金が繰り越されることとなった。しかし、総合的には研究の内容としては充実されている。
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次年度使用額の使用計画 |
今後は、研究全体の進行状況を様子見ながらも、全国調査の準備を進めていくこととする。しかし、もともとの研究が発展したことによる、国際共同研究やE-SQUASHの開発においても、さらに検証を続けて、さらなる共同研究を推し進めていく予定である。
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