研究課題/領域番号 |
26463448
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
陶山 啓子 愛媛大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (50214713)
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研究分担者 |
田中 久美子 愛媛大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (00342296)
中村 五月(形上五月) 愛媛大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40549317)
小岡 亜希子 愛媛大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50444758)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 排泄行動 / 認知症高齢者 / 潜在能力 / 援助プログラム |
研究実績の概要 |
認知症高齢者の排泄行動の実態を明らかにする目的で、認知症治療病棟に入院中の高齢者を対象にの排泄状態、排泄行動および看護・介護者が行っている援助方法について調査を行った。 対象者は認知症治療病棟に1ヶ月以上入院している高齢者で、寝たきりや終末期にあるなどの理由で、トイレでの排泄が全く行われていない者は除外した。調査項目は、基本属性、認知症の原因疾患、ADL、生活状況、認知機能(N式老年者用精神状態尺度:NMスケール)、BPSDの有無、排泄状態、排泄援助方法、認知機能の低下に伴う排泄行動(弄便、トイレ以外での排泄、オムツ外し等8項目)の有無とした。データは、調査日から遡って過去4週間の看護・介護記録および排泄チェック表の閲覧および病棟の看護・介護職への聞き取りで収集した。 対象者は71名で、男性20名(28.2%)、女性51名(71.8%)、平均年齢は85.0 (±5.6)歳であった。歩行が自立している者が31名(43.7%)で、BPSDがある者は38名(53.5%)であった。尿失禁がある者は53名(74.6%)、便失禁がある者は39名(54.9%)であった。認知機能の低下に伴う排泄行動がある者は38名(53.5%)であり、最も多くみられたのは「転倒リスクがあるがトイレに自分で行こうとする」で22名(31%)、次いで「排泄援助拒否」が19名(26.8%)であった。認知機能の低下に伴う排泄行動のうち「弄便」、「トイレ以外での排泄」、「オムツ外し」、「排泄援助拒否」の4項目がNMスケールとの関連が認められ(p<0.05)、認知機能低下の影響が強いことが明らかとなった。 認知症高齢者の排泄行動は、転倒のリスクを考慮にする必要性が示唆された。さらに、排泄の拒否が多いことも明らかになった。これらの行動についても今後検討する必要性があると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、認知機能の低下に伴って生じている不適切な排泄行動の特性を明らかにして、援助プログラムを作成するためのデータ収集期間を予定していた。実際に認知症治療病棟に入院中の高齢者の実態調査を行うことで、プログラム作成を行う認知症高齢者の行動についてより具体的に把握することができた。実際には、弄便やオムツ外しの頻度は少ないが、転倒のリスクがあるにもかかわらずトイレに行こうとすることや、排泄援助の拒否などの行動が頻度として高いことが明らかになった。これらの行動も含めて対象選定を行い、プログラム作成を実施していく必要性が明らかにり、プログラムの作成、今後の調査方法の改善に有効な示唆が得られる調査を行うことができたと考える。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の調査から、援助プログラムを実施する対象にみられる行動を当初予定した「オムツはずし」、「弄便」、「頻回にトイレに行く」、「不適切な場所での排泄」に加えて、「転倒のリスクがあるがトイレに自分で行こうとする」、「排泄援助拒否」を加える。さらに、対象者のアセスメントの際には、認知症高齢者の訴えや行動の意味の推察などを加えることで、排泄行動だけで分類した援助プログラムにならないようにする。また、援助プログラムを実施して、実施した結果の評価に基づいて、プログラムの妥当性を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度の調査では、対象者の排尿状態や排便状態を調査するために実験補助者を雇用する予定であったが、研究を実施した病棟において、詳細な排泄日誌が記録されており、実際の排泄援助を行いながら実施する予定であったデータ収集に実験補助者を要さなかったことによって、次年度の使用額生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は、対象者との関わりか得られるデータを予定より増やしているので、実験補助者の雇用が当初の予定より必要であることが見込まれるため、次年度の実験補助者の雇用のための費用として使用する予定である。
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