研究課題/領域番号 |
26463450
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
濱口 和之 大分大学, 医学部, 教授 (60180931)
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研究分担者 |
脇 幸子 大分大学, 医学部, 准教授 (10274747)
三重野 英子 大分大学, 医学部, 教授 (60209723)
井上 加奈子 熊本保健科学大学, 保健科学部, 助教 (80634360)
森 万純 大分大学, 医学部, 助教 (60533099)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 高齢者糖尿病 / 介護老人保健施設 / チーム医療 / 慢性期看護 / 病みの軌跡 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、介護老人保健施設(以下、老健施設)に入所する糖尿病要介護高齢者に対する適切な治療および生活援助を提供するために、看護師を中心とした糖尿病チーム医療・介護モデルを開発することにある。 初年度は老健施設における糖尿病高齢者の実態把握と課題の明確化をはかるため、老健施設における入所者の状況と糖尿病管理の実態の把握を行い、研究者間で老健施設における糖尿病管理に関する文献クリティークを行い、ディスカッションを行った。その結果、研究の方向性として高齢者を全人的視点からとらえ、常にクライアントを中心に据える視点の重要性が確認された。そこで、2年目である本年度は、慢性期看護における「病みの軌跡理論」を用いて、介護施設入所者が糖尿病とともに生きてきた人生をどのように捉え、今後どのように糖尿病と向き合って行こうと考えているかを対象者の語りから明らかにすることを目的に研究を行った。糖尿病をもち長期に施設入所する高齢者を対象とし、インタビュー逐語録から語りの内容を損なわずに、病みの軌跡モデルを用いて、管理に影響する条件、編みなおし、軌跡の予想を抽出し、軌跡の局面を位置づけ、対象者の病みの軌跡を比較し、事例毎に固有の軌跡を明らかにした。全事例とも、過去の生活習慣と糖尿病の合併症の因果関係を理解し、糖尿病に関心を抱き、今後は予防行動をとろうとしていた。一方で、人生を振り返った時、自分がとってきた生活行動を必ずしも後悔しているわけではなかった。高齢者は信念や価値観から過去の経験を意味づけし、希望を持ちながら糖尿病とともに生きていることが示唆され、これらのことを踏まえた看護援助が必要であることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究の初年度、第1段階は、「特定の老健施設における糖尿病高齢者の実態把握と課題の明確化」であった。特定の老健施設の承諾を得て、糖尿病認定看護師の資格を持つ研究協力者とともに同施設の高齢者の実態を把握した。そして、2年目の本年度は事例へのインタビューを通して、老健施設入所者が捉える自身の糖尿病とともに生きる人生に対する思いを明らかにし、看護援助の方向性を見出した。また、学会発表を予定しているが、学術雑誌への論文投稿までには至っていない。また、特定の老健施設ではなく、他施設を対象とした糖尿病管理の実態把握のためのアンケート調査も遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
第1段階、第2段階と進んできた。すなわち、老健入所者に対する糖尿病を含めた看護ケアのアプローチとして、高齢者であり、また糖尿病を持ったクライアントとして患者中心の視点を忘れずに、慢性期看護における「病みの軌跡理論」を用いて、高齢者糖尿病にどのような看護ケアが必要かを考えてきた。 第1、第2段階を補足する「多施設を対象とした糖尿病管理の実態の把握と課題の明確化」を実施するための、アンケート用紙を郵送し、他の老健施設における糖尿病管理の実態の把握に関するデータを得ることが当面の目標である。 最終的な課題は、個別のケアをチーム医療の観点から行っていくことである。このため、看護師、医師、栄養士、薬剤師、介護士、患者および家族を対象にインタビューを実施し、密なデータ収集をすることによって、各スタッフが感じている糖尿病管理の問題点・課題を明らかにし、チーム医療・介護の実践に何が必要かを探索したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、事例に対するインタビューとその結果のまとめや、学会での情報収集に時間がかかり、アンケート調査に至らなかったため、アルバイトを雇う必要がなかった。また、パソコンやプリンタは既存の機器を利用したため、ソフトの購入やメモリーの増設、システム移行の作業代のみで済み、使用額が当初の予定より少なかった。設備備品、消耗品、旅費、謝金の全般的に余りが生じたため、次年度に繰り越すこととした。
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次年度使用額の使用計画 |
引き続き、情報収集に力を入れる。必要な書籍の購入、文献の発注も行う。また、これまでの成果を学会で発表し、さらに専門性の高い領域について情報収集に力を入れる予定であり、出張費としての旅費が必要となる。このような準備の上で、アンケート調査を実施する予定である。発送にあたっては研究補助者を雇い入れる。また、データ収集の結果をまとめる作業が必要なため、パソコンの購入、プリンタやプリンタトナーの購入、データ入力の際の研究補助者への謝金が必要となる。その他、事務用品など繰越額から使用する予定である。
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