研究課題/領域番号 |
26463463
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研究機関 | 福岡県立大学 |
研究代表者 |
檪 直美 福岡県立大学, 看護学部, 准教授 (80331883)
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研究分担者 |
横尾 美智代 西九州大学, 公私立大学の部局等, 教授 (00336158)
尾形 由起子 福岡県立大学, 看護学部, 教授 (10382425)
田中 美加 北里大学, 看護学部, 教授 (70412765)
江上 史子 福岡県立大学, 看護学部, 助教 (80336841)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 家族介護者 / 認知症 / 介護力 / 多職種連携 |
研究実績の概要 |
平成27年度の研究目的は、介護力獲得支援プログラムを試作することである。まず政令都市で最も高齢化率の高いK市において、介護支援専門員の協力を得て対象となる家族介護者を50名選定し、研究者が開発した介護力尺度を用いて介護力を測定した。また介護関連ニーズの関連より認知症高齢者を抱える家族介護者のニーズの特徴をとらえ、このニーズにそった支援を行うことで介護力を向上できるという仮説より介護力獲得支援プログラム試作を検討した。試作にあたり具体的には、H27年度に4回にわたり多職種の専門職者が参加した多職種連携研修会を開催した。研修会の内容は2時間の研修会で1時間各専門職からの知識提供を行ったうえで、家族介護者と多職種のメンバーでグループワークを行った。結果として、参加人数延べ319名でアンケート回収率61%であった。分析結果、職種の内訳ではメディカルでは医師、歯科医師、看護師で82名、コメディカルでは介護支援専門員、管理栄養士、保健師、ST、PT、OT、社会福祉士、介護福祉士で54名、行政関係、家族介護者、一般市民で30名、その他28名。研修会の成果として、以下の4点が導き出された。①家族介護者のニーズとは、フォーマルサポートのみでは充足されず専門職とのパートナシップを望んでいる。②言語の壁について、専門職者が生活者として語ることで共通言語となり得る。③家族介護者も専門職者も物理的・時間的余裕がない状況であり、認知症高齢者を見守る地域の仕組みづくりが不可欠である。④医療と福祉の専門職が連携した知識と技術提供を望んでいる。また課題として、時間的制約がある中での顔と顔の見える関係づくりの場をどのように継続していくのか、また家族介護者の思いやニーズを反映させるシステムがないことが明らかとなった。これらの結果をふまえてH28年度の実施にむけての介護力獲得支援プログラムの準備を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度の目的は多職種連携による家族介護者の具体的支援方法を見出すことであり、順調に遂行できた要因として、2点あげられる。まず居宅介護事業所の協力が得られ50名の家族介護者からの聞き取り調査がスムーズに実施できたことである。次に多職種連携での意見交換や研修会開催について、多くの専門職の協力が得られたことである。この専門職の協力が得られた理由として、K市は政令都市で最も高齢化率が高く認知症増加も著しいことより、どの専門職も課題を抱え、問題意識が高かった。そのため多職種が連携していくための仕組みづくりが加速化していく中、このプログラム試作への呼びかけにも多職種が積極的に応じ、研修会の企画、運営が迅速に行えた。また企画、運営をスムーズに行うための組織づくりについては、まず多職種からなる10名のコア組織を中心に、医師、歯科医師、薬剤師、看護師、保健師、介護福祉士、社会福祉士、管理栄養士、歯科衛生士等のそれぞれ職能団体に働きかけた。そして行政関係者やNPO法人である家族会の積極的協力も得られ、他の地域でも珍しい家族介護者や一般市民が参加しての多職種連携研修会が継続的に実施できた。開催にあたり場所や時間帯、研修会の内容等について、毎月世話人会を開き十分に協議を重ね準備することができたことも順調に研修会を開催できた要因となる。また家族介護者の参加者は、家族の会の代表であり参加できない家族のニーズも専門職に直接伝えることができていた。さらに研修会終了後に研修内容を振り返り丁寧にアンケートを分析していくことで、研修会の成果と課題を明らかにすることができ、家族介護者のニーズにそった内容が検討できたと考える。
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今後の研究の推進方策 |
H28年度は前年度の多職種研修会の実績と分析結果をふまえて、認知症を抱える家族介護者への多職種連携での支援方法について焦点化した研修会を5回(4月、7月、10月、12月、1月)開催予定である。その研修会においては、現在家族介護者である20名(10グループ編成で2名ずつ参加)の参加を目指す。研修会の内容として、家族介護者を中心に専門職の連携した知識と技術の提供を行う。知識については事前に専門職の間で協議し、その内容の適正について確認していく。また技術については、まずは排泄の援助を取り上げ実際の物品を用いて体験形式とする。毎回の研修会で家族介護者の満足度や思いについて聞き取り調査を行い、研修会前後での介護力の変化と介護肯定感形成について質問紙調査およびインタビューを実施する。1月~2月に介護力は統計的解析、インタビュー内容は質的帰納的に分析を行い、2月~3月にその結果を踏まえて、プログラムの修正と改善を行い、報告書にまとめる作業をおこなう。さらに研修会で検討を重ね試作した介護力獲得支援プログラムについて、地域で誰でもいつでも家族介護者が集える場所を確保し、そこで定期的に専門職によるサポートとしての相談会や技術支援指導の開催準備を進めていく。また家族介護者の自分の時間作りのためのカフェの設置、家族介護者同士のピアヘルパーの仕組みも検討し、3月以降に実施可能となるよう家族会や行政と連携して広報や啓発活動を計画的に実施していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
H27年度の人件費・謝金および旅費等の直接経費529,553円がH28年度へ繰り越しとなった。繰越金となった理由としてまず人件費・謝金においては、家族介護者への聞き取り調査で介護支援専門員へ調査協力を依頼したが、予想以上に短期間での聞き取り調査が終了できたため人件費が削減となったためである。また多職種連携研修会において、家族介護者への技術支援で専門職への謝金について予算を組んでいたが、H27年度は家族介護者のニーズもあり相談支援が中心であったため、技術支援はH28年度の実施予定となり、研修会での専門職者への謝金の支払いが生じなかった。旅費交通費においては、関係学術機関での発表および調査のための旅費であったが、発表会場が近場であったことや、調査の期間短縮化ができたこと、研修会会場を居住地周辺で行えたこと、研修会会場費用が低額であったこと等が要因となった。
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次年度使用額の使用計画 |
H27年度の繰越金はH28年度の人件費・謝金に約10万円、旅費に約25万円、その他に約13万円加算する。H28年度の研修会計画では、介護技術提供のため人件費・謝金として20万円計上する。内訳として、介護技術支援専門職者への人件費[(時給870円+交通費)×3回×10人]、有識者会議を開催のため、謝金[(講師級1h4,490円+交通費)×4回×3人]を計上する。旅費については、55万円を計上する。学会発表の交通費として32万円(内訳:1人あたり8万円×4人)と京都府の認知症対応のための地域の取り組みへの見学旅費として12万円(内訳:1人あたり4万円×3人)、研修会等への交通費として11万円を計上する。その他、介護用品の購入や会場使用料、報告書の印刷と郵送費に38万円程度必要となり、H28年度の直接経費を予定通り執行する計画である。
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