研究実績の概要 |
研究期間の4年間での多職種による家族介護者支援を中心とした研修会の参加は延べ1126人であった。参加した職種は, 介護支援専門員が179人(15.9%)で最も多く, 看護師172人(15.3%), 歯科医師122人(10.8%),管理栄養士72人(6.4%)などの他, 職種は多岐にわたっていた。この研修会において参加した家族介護者81人を対象に介護力獲得支援プログラムの評価を行った。まず家族介護者が介護生活で困っていることについては「要介護者の体力・病状」,「排泄状況」,「介護者自身の体力・健康」など『要介護者・介護者の医療的ニーズ』に関するものが最も多かった。次いで、「介護者の子どもたちへの気兼ね」や「介護に伴う時間的拘束による弊害」などの『介護者の精神的負担と拘束感』,『要介護者・介護者の関係性』,『今後の生活への不安』等が抽出された。専門職に聞きたいことに関する質問には,「健康管理の方法」や「排泄管理の方法」,「認知症の理解」など医療的知識や対処方法など医療的ニーズに関することが抽出されたが,一方で専門職にしてほしいこと・聞きたいことがあるかの質問については,「よくある」「たまにある」が全体の25.8%であるのに対し,「あまりない」「ほとんどない」が74.2%を占めた。このことからも家族介護者自ら専門職に支援を求めるためには,顔の見える関係の中で気軽に相談できる場や機会の提供がまず必要であることが明らかとなった。さらに対象の家族介護者へ研究者が作成した介護力尺度を用いて研修会前後で評価を行った結果,介護関連知識が増えたことに関連して研修後は【介護を肯定的に捉える力】と【介護ケア実践力】,【周囲の援助活用力】が有意に高かった(P<0.01)。以上の結果より家族介護者支援としての顔の見える関係を構築した専門職協同での介護力獲得支援プラグラムの有効性は明らかとなった。
|