研究課題/領域番号 |
26463468
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研究機関 | 杏林大学 |
研究代表者 |
大浦 紀彦 杏林大学, 保健学部, 教授 (40322424)
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研究分担者 |
加賀谷 優 山梨大学, 総合研究部, 助教 (90584805)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | CLI / 血流評価 / SPP / StO2 / PI / 創傷評価 |
研究実績の概要 |
平成27年度は、通院透析患者114名を対象に、創傷がある群とない群に分けて調査を行った。平均年齢71.8±12.0歳、男性89人(78.0%)対象として、足趾部でのperfusion index(PI)を計測し、創傷のある群とない群を比較することによって、足部の虚血を評価した。さらに従来のSPP、StO2でも2群を比較した。 SPP値は、従来どおり足背・足底の2点計測で、PI値も全足趾で計測した。PI値はまだ新しい機器によるデータなので、5足趾の平均、5足趾の合計、最低値などのPI値をどのように評価するかも検討した。 今回新たに計測することとなったPI値は、ROC曲線での解析では、感度特異度ともに、足趾部の創傷発生との関係性がSPPよりも鋭敏で信頼性が高いことが示された。PI値は、5足趾の平均、5足趾の合計、最低値どれでも評価に用いることは可能であったが、どれかひとつの足趾のみの計測でも足部の虚血の評価が可能であることが示された。そのPIによるカットオフ値は0.3-0.5であった。 PI計測は、SPPと比較すると疼痛も少なく、計測時間も比較的短く、SPP値がほぼ正常値となっているような比較的軽症なCLI、PAD患者のスクリーニング機器として、SPPよりも有効であると考えられた。CLI、PAD評価にPIを用いてSPPと比較した報告はまだなく、この結果がもたらす影響は大きいと考えられる。 StO2は、足趾部では、足底や足背よりも高値に出る傾向にあり、生理学的に考えて、末梢血流が中枢を上回ることはないと考えられるため、足趾のスクリーニングには不向きであることが示された。これは、StO2は、組織からの赤血球のHbの反射によって計測を行うが、StO2計測において、近赤外線が足趾を通過してしまうことによると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初申請時の計画には記載していないが、他の血流計測装置の開発が遅れていることから、平成27年度に新たにPIによる足趾部での血流計測による当該研究に加えることにした。 平成27年度には、CLIのハイリスク群である外来の透析患者を対象として、SPP、StO2、perfusion index(PI)計測を施行した。これらの客観的な指標が創傷発生と関係があるかどうか、足趾部におけるCLIのスクリーニング機器としての妥当性を検討した。 われわれの予想どおりPI値は感度特異度ともに、足趾部の創傷発生との関係性がSPPよりも鋭敏で信頼性が高く、軽症のCLI、PADのスクリーニング機器としての使用が可能であることが示された。
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今後の研究の推進方策 |
通院透析患者を対象としたSPP、ABIによる血流評価を行い、その後に血行再建を依頼すると連携の加算を認める診療報酬改定が平成28年4月より施行されることとなった。しかし実際には、SPPやABIよりもPIの方が、足趾のスクリーニング指標として優れている可能性がある。施設数と症例数を増やして検討することを考える。 ①通院透析患者におけるスクリーニングの一つとしてPIについて症例数を増やすことを考える。正確なカットオフ値を求める。②Ratherford 分類のタイプ5においてSPP値よりもPI値が血行再建後のendpointとして有効であることを立証する。③形成外科外来のように、重症のCLI患者ばかりを対象とした場合に、PIの有効性がSPPと比較して得られるかどうかを検証する。④開発が遅れているレーザースペックルフローグラフィー(LSFG-ANW)を用いたCLIの評価について検討する。⑤レーザースペックルフローグラフィー(LSFG-ANW)が血行再建のendpointとなり得るかどうかを血行再建の前後で検討する。⑥レーザースペックルフローグラフィー(LSFG-ANW)が開発が間に合わないことも考慮して、PIとSPPと創傷の評価をデジタルデータで残す創傷解析システムによる有効性についても検討を考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
2次元レーザースペックルフローグラフィー(LSFG-ANW)の開発が遅れており、現在購入を見合わせている。レーザースペックルフローグラフィー(LSFG-ANW)の開発が間に合わない場合、代替案として創傷解析システムの購入を検討する。 2次元レーザースペックルフローグラフィー(LSFG-ANW)に匹敵する解析を期待する。
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次年度使用額の使用計画 |
1.レーザースペックルフローグラフィー(LSFG-ANW)が間に合えば、PIと同様に血行再建の前後に使用し、血行再建におけるendpointとを評価するためのデバイスとしての妥当性を検討する。 2.レーザースペックルフローグラフィー(LSFG-ANW)が間に合わなければ、創傷解析システムを用いて、endpointの評価を行う。
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