研究課題/領域番号 |
26463484
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
遠藤 淑美 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (50279832)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 補完代替療法 / アロマセラピー / ハンドマッサージ / 芳香浴 / 患者・看護師関係 / 精神科看護 |
研究実績の概要 |
平成29年度は,教育プログラムに参加し,その後のフォローアップを希望した施設への1年間のフォロー・アップを実施し,看護師および看護師からみた患者への補完代替療法実施の効果を明らかにすることを目的とした. 方法は,月1回のインタビュー調査および1か月後,半年後,一年後のアロマを用いたハンドセラピー前後の看護師のストレス状況の変化を調査した.客観的指標としてPOMSと唾液アミラーゼによって調査した. 参加施設は,4施設5病棟で回復期病棟,認知症病棟,長期療養型病棟あった.教育プログラムで紹介したアロマセラピーをどのように患者へ提供するかは,各施設の特徴や関与する人数によっても異なるため,施設にお任せした. その結果,マッサージ以外ではアロマスプレー,アロマパッチ(シール)によるセルフアロマ,グループ活動,芳香浴の使用があった.看護師自身の変化には気分の安定やリラクセーションといった「自分自身の安定」や「患者との関係の変化」「継続や普及のための独自の工夫」があった.特に「患者との関係の変化」では,患者がお互いのことをマッサージし合い患者同士のケアリングが進むことへの気づきがあったり,コミュニケーションをとりにくい患者に対して,マッサージと香りの効果により相互の緊張がほぐれ普段語らないような患者のより深い内面を語りだすという変化が認められた. 一方患者の変化としては,「精神的な安定の増加」「セルフケア行動の増加」「社会的行動の増加」が見られた.具体的には,笑顔が増え静かにリラックスしたコミュニケーションが増え,頓用薬の使用が減った.セルフケア行動として落ち着かないときに自らアロマを求めたり,自己マッサージをする行為が見られた. 看護師の唾液アミラーゼおよびPOMSに明確な変化は現段階では見られなかったが,主観的には明らかに良い影響を及ぼしていることが明らかとなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の大きな目的であった1年間のフォローアップによる各施設での実施を,一施設の脱落もなく実施し終えることができたのは大きな成果であったと考える.その過程では意見交流会を開催してほしいなど,施設側からの積極的な関心と行動も生じていた. さらに得られた結果は,当初補完代替医療の普及に障害となるいくつかの要因,例えば時間の不足,予算,知識及び技術の不足をどのように補えばよいか,継続の過程で何が障壁になり,その障壁に対してどのような対処が可能であるかもわかり,今度の普及のための資料が得られたと考える.
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今後の研究の推進方策 |
最後の年度になるため,得られた客観的データと主観的データを統合し,身体面から働きかける補完代替療法の効果,教育プログラムの効果,普及方法について分析する.その際,さらにデータの追加が必要であれば倫理的な配慮に基づき新たな追加データの収集を行う.明らかになった以上の分析結果を順次公表していく予定である. また,研究の過程で実施したアロマセラピーによるハンドマッサージ,ふっとマッサージのパンフレット作成をし,普及の一助としたい.
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度,イギリスでの学会発表を予定していたがテロ等の関係から,近縁のアジアでの学会に発表場所を変更したことが大きな理由である. 次年度は普及のための1つの手段として,補完療法を紹介しマッサージ方法等をのせたパンフレットを作成することを計画しこの遂行にあてたい.
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