本研究の目的は、精神障害を持つ人のきょうだいや子どもの立場にある家族の「家族による家族学習会(以下、家族学習会)」の体験を明らかにすることである。また、「家族学習会」への参加をとおして、地域の家族会に入会した、きょうだいや子どもの立場にある家族が家族会に与える影響を明らかにし、日本の家族会活性化や新たな活動への可能性を検討することである。 「家族学習会」とは、統合失調症の家族を対象に、同じ立場にある精神障害者家族会の会員が病気や障害についての正しい知識を提供し、家族自身の体験的知識を共有する、小グループで行う体系的なプログラムである。実施主体は精神障害者家族会であるため、参加者は親の立場の家族が中心である。 家族学習会を経験したきょうだいの立場にある家族、未受診の親を持つ成人した子どもの立場の家族へのインタビューを実施し、きょうだいや子どもは親とは異なる経験や困難のあること、体験を共有できる同じ立場の家族同士の繋がりを求めていることが明らかになった。そこで、未だ開催されていない、子どもの立場にある家族学習会を開催する目的で、子どもの集いの場を持った。集いの参加者から協力者を募り、平成27・28年度に「子どもの立場の家族学習会(5回連続講座)」を開催した。参加者は、仲間の共感の中で、自らを振り返り、自信を回復するとともに、病気の親との関係にも新たな発見や変化を見出していた。この成果は、平成27・28年度の「リカバリーフォーラム」の分科会(子ども支援)で報告した。また、これらの活動は、朝日新聞、毎日新聞の記事となった。 きょうだいや子どもの立場の家族は地域で支援を受けることなく孤立している。今後は、多様な立場の家族学習会を精神障害者家族会が開催する事で、若い世代の家族が家族会に入会することを可能にし、高齢化した家族会の若返りや活性化に繋がると考えられた。
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