平成28年度に明らかにした11の精神科訪問看護の内容から、精神医療福祉サービス資源が少ない地域における訪問看護の役割について研究協力者である訪問看護師らと検討した。「役割①利用者のリカバリーを支援する」について、精神医療福祉サービス資源が限定されている地域では、余暇活動など利用者の夢や希望に関連する資源も不十分であるため、色々な可能性を信じて利用者の希望や目標を後押しすることに大きな意味があった。また、精神状態の把握や内服自己管理の支援は、従来は病状のコントロールや服薬の継続ができているかに焦点を当てていたが、本研究では内服は利用者の目標を達成するための手段と考え、問題解決志向からリカバリー志向へ転換されていた。「役割②利用者・家族を包括的に支援する」について、資源が少ない地域では生活に不便な面も多く、利用者の全般的機能が低くない場合でも独居生活が難しく家族と同居していることも少なくないこと、同居家族が高齢、病気を抱えている、家族関係上の問題を抱えていることもあるため、家族も含めて包括的に支援することが必要であった。また、資源の少ない地域では家族は利用者の重要な支援者でもあるため、家族を支援者の一人としてサポートしたり家族と協力したりすることも重要である。「役割③資源が少ないことの利点を生かして連携する」については、資源が少ないため連携できる相手は限られていることは一般的には弱点かもしれないが、連携・協働する支援者が複雑ではない分、連絡や調整がし易く、お互いに協力することが前提となっており、その利点を生かすことで有機的な連携や協働が可能になると考えた。 以上の検討に加え、平成28年度までに検討した保健師の役割を基に地域基盤型精神看護の全体像を整理した。 また、平成28年度の研究成果の発表として、研究論文1件、学会発表3件(国内2、国外1)を行った。
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