研究課題/領域番号 |
26463510
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研究機関 | 東京女子医科大学 |
研究代表者 |
山内 典子 東京女子医科大学, 看護学部, 臨床講師 (10517436)
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研究分担者 |
田中 美恵子 東京女子医科大学, 看護学部, 教授 (10171802)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | せん妄ケアシステム / 看護師 / 急性期病院 / 教育 |
研究実績の概要 |
【背景・目的】我々は段階的ケアモデルにおけるレベルⅠに該当する看護師に対する実践と教育のシステムを構築するべく「せん妄ケアパッケージ」(以下、パッケージ)を他施設に調査したせん妄ケアシステムの構築の現状と課題を参考に考案した。パッケージは①せん妄のハイリスク患者の選定②予防ケア③評価の包括的なケアである。平成27年にA大学病院においてパッケージを導入した。パッケージ導入前のせん妄およびケアに対する看護師の知識を調査し、今後の教育内容や方法を検討する。 【方法】平成27年7月、A大学病院の24部署の看護師を対象に自記式質問紙調査を行った。質問紙の内容は、対象の背景の他、せん妄ケアに関する知識・実施・自信(東京都がんせん妄ケア研修作成)であった。今回は対象者の背景と知識のみを単純集計した。 【結果】看護師584名を対象に質問紙を配付し、490名より回答を得た(回答率:83.9%)。女性が449名(91.7%)であり、平均経験年数は6.43年(SD: 5.63)であった。せん妄に対するコンサルテーションの経験は、329名(67.1%)がありと回答した。知識において特に正答率の低かった項目は「第一選択薬としての抗精神病薬」(20.0%)「原因の最多は精神的ストレス」(35.3%)「せん妄の記憶は残らない」(49.2%)「高齢者への睡眠薬使用の推奨」(52.7%)であった。 【考察】看護師は、抗精神病薬による治療や睡眠薬によるせん妄の誘発の知識が不足していることが明らかになった。また、せん妄の原因として身体よりも精神的なストレスをみていると考えられた。記憶に関する正答率の低さは、それに対する経験上の実感が少ないことも理由と考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「せん妄ケア包括パッケージ」(以下、パッケージ)の考案後、A大学病院のせん妄患者の多い部署においてパッケージを導入した。導入前には、各部署より選出されたリンクナースに対して教育を行うとともに、パッケージの電子カルテ化の整備を図った。現在に至ってもパッケージの運用を継続しており、その間に2ヶ月に一度、リンクナースを対象としたグループワークを実施している。グループワークでは、主にパッケージの活用とケアの内容、患者の反応をテーマに、各部署のせん妄ケアに関する年間目標と計画に沿った実践について議論する形式とした。パッケージの運用とそれを部署に普及すべくリンクナースへの教育を介入とした導入前における「せん妄の知識・せん妄ケアの実施度、自信」の調査の結果は、上記の報告の通りである。その後も平成29年3月までに合計5回にわたる調査を実施した。これらの経過から、段階的ケアモデルにおけるレベルⅠに該当する看護師に対するせん妄ケアの実践と教育のシステムの開発という目的は、ほぼ達成されたと考える。
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今後の研究の推進方策 |
既に運用している段階的ケアモデルにおけるレベルⅠに該当する看護師に対するせん妄ケアの実践と教育のシステムの効果について「せん妄の知識・せん妄ケアの実施度、自信」の調査結果(導入前、導入直後、導入後3ヶ月、6ヶ月、1年)から検証し、その結果を公表する。また、調査結果をふまえて、より効果的な実践につながるシステムへと改善を図る予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
量的データの入力作業費、論文投稿に関連する費用が翌年度に繰り越されるため
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次年度使用額の使用計画 |
質問紙最終分(3月分)の入力、論文投稿にかかる費用を繰り越しとして、計画を実施予定である
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