研究課題/領域番号 |
26463514
|
研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
渋谷 菜穂子 中部大学, 生命健康科学部, 教授 (40324420)
|
研究分担者 |
高橋 里沙 天理医療大学, 医療学部, 助教 (90596206)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 精神科看護師 / 怒りの体験 / 対患者場面 / 質問紙調査 / 共分散構造分析 / 因果モデル |
研究実績の概要 |
目的:前年度に行った、精神科病棟に勤務する看護師が対患者場面において感じる怒り体験に関する調査について分析した(調査はAverillの質問紙を改変・作成したものを使用した)。得られたデータより、怒りを喚起するに至った「怒りの経験」、「怒りの原因」、怒りを喚起させた患者に対して感じた時に「したかった行動」、その怒りを処理するために「実際に取った行動」の関係、及びその関連要因について共分散構造分析を行い、因果モデル(パス図)に表すことを目的とした。 研究対象:愛知県内の精神科病院に勤務する看護師295名。 因果モデルの想定:「怒りの経験を経験しその怒りの原因によって、怒りの反応行動(願望)を喚起する→自己コントロールによって実際の怒りの反応行動は異なる」というプロセスを想定した。関連要因として、デモグラフィックス(年齢、精神科経験年数など)、悪意の知覚、被害項目などを想定した。 結果及び結論:精神科看護師の「怒りの体験」を分析するために、共分散構造分析を行った。その結果、「怒りの経験→怒りの原因→怒りの反応行動(願望)→怒りの反応行動(実行)」という基軸が得られた。その解釈は、看護師が「怒りを経験」しその怒りの強さなどが強いほど「怒りの原因(患者に悪意を感じたか否か)」に影響を与えた→患者に対して何らか(例:殴る、話し合う)の「行動を起こしたいと願望」する→「実際に何らかの行動を起こす」、である。以上の結果をパス図に表すことができた。 怒りの反応行動(願望・実行)として、身体的攻撃、言語的攻撃などAverillの反応行動のうち8つが抽出できた。また、パス図の中で関連要因として、怒りのコントロール、被害項目の2つが抽出された。 今回の研究成果については、平成29年10月にアイルランドで開催される国際学会においてポスター発表を行うことが決定している(既に査読審査を通過し受理されている)。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究分担者が平成27年度中に出産し、その後平成28年4月1日付で勤務異動し、子の養育及び異動に伴う業務負担が増えたため、本研究において担当予定だった【研究1】の分析(一部)が進まなかった。 平成26年度に【研究1】の前研究として別の調査研究(一般科看護師の怒りの体験)を追加して実施したため、【研究1】の実施が平成27年度にずれ込んでしまった。平成27年度内に前研究の分析は終了している。また、平成27年度内に【研究1】の実施及び分析は既に終了し、平成28年度中に行った分析(上記概要に記載した共分散構造分析)も終了している。現在、前研究の結果と【研究1】の結果(平成28年度に行った共分散構造分析を含む)を合わせ、総合的に考察を加えた上で、現在投稿論文として作成中である。 【研究2】の実施については、平成28年度中に調査用紙の作成はほぼ済んでいるので、平成29年度に調査を実施し、その分析及び考察を行う予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
【研究1】において、一般科看護師と精神科看護師の、怒りが喚起されてから実際に反応行動を起こすまでの過程を因果モデルで表すことができた。 平成29年度は、【研究1】の結果を踏まえてさらに研究を進めることにしている。 具体的に【研究2】においては、数量的データを用いて調査研究を実施する予定である。数量的データの収集は、ソーシャルサポート、ストレスコーピング、BIS/BAS尺度日本語版等の既存の質問紙を用いて調査を行う(対象者として精神科看護師500名程度のデータの収集と分析を想定している)。 調査は、精神科看護師の日常生活場面/対患者場面におけるデータを扱い、各場面における怒り感情の制御方略の弁別を行う。弁別は平成26年度(一般科看護師対象)及び平成27年度(精神科看護師対象)に実施した調査結果で得られた量的データとの整合性を査定することによって行う。また、【研究1】の分析結果を踏まえ、研究1で得られた記述式データの分析から怒りをコントロールする要因を探り出す。 以上の【研究2】終了後、さらに研究を発展させ、精神科看護師が対患者場面において怒り感情を制御させる方略に関する尺度を作成することにつなげていく予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初の研究計画では、平成28年度に評価分析システムを購入し、実施した調査内容の分析を行う予定であったが、研究に遅れが生じたため購入が間に合わなかった。また、平成28年度中に外国の学会における研究発表を計画していたが、上記の理由によりかなわなかった。そのため、予算を執行することができなかった。
|
次年度使用額の使用計画 |
平成27・28年度に実施した研究の成果を国際学会(アイルランド)で発表することが決定している(学会事務局より、査読審査に通過し受理された旨の通知を受け取っている)。また、平成29年度は、当初計画していたものの遅れている(平成28年度分の)調査を実施し分析するため、ソフトを購入する予定にしている。
|