日常生活場面では怒りを表出する看護師も、対患者場面においては怒りを表出しない。しかし、同じ対患者場面においても内科等の一般診療科と精神科とでは、看護師の怒りの表出の仕方に相違がみられるのではないかと考え、まず一般診療科看護師と精神科看護師における「怒りの経験」の違いについて分析する目的で質問紙調査を実施し(研究1)、次いで精神科看護師による怒りの経験のうち、特に怒りの表出過程の詳細を分析する目的で面接調査を実施した(研究2)。 【研究1】「怒りの体験」質問紙(改変)を用いた。分析は、一般科看護師及び精神科看護師が怒りを体験した時→反応を起こすまでの経過を示す因果モデルをそれぞれ作成することであった。因果モデルを想定し、「したかった行動 → 実際の行動」に至るまでにどのような要因が関連しているのかを中心に分析した。因果モデルの適合度検証は、パス図を描くことにより共分散構造分析によるパス解析を実施し、モデル適合度指標を使用した。その結果、一般的に言われている基準(GFIとAGFIが共に0.9以上)を下回ったものの、RMSEAは0.1以下であったため、結果の使用に耐えうると判断できた。しかし、因果モデルとして両者に大きな違いは認められなかった。怒りの強さに影響を与える要因として、重回帰分析では両者に違いがみられた(精神科看護師には「悪意の知覚」がみられた)。 【研究2】精神科看護師(20名)に対して面接調査を行った。質問項目はストレス解消法や怒りを抑制する要因、周囲からのサポート内容等であった。その結果、対象者はストレス解消法を持ち仕事とプライベートを明確に分けることで怒りの表出を抑制していた。またサポート内容より怒りの表出を抑制する対処法を分析した。 以上より、今後精神科看護師のWell-beingを上げる対処法を考察することによって怒りを制御する尺度の作成へ向けた足掛かりができた。
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