研究課題/領域番号 |
26463515
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研究機関 | 甲南女子大学 |
研究代表者 |
松岡 純子 甲南女子大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (40375621)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 地域精神看護 / 精神科訪問看護 / リカバリー / 文化的感受性 / 対話 |
研究実績の概要 |
平成27年度は、文化的感受性を備えた対話を基盤としたリカバリー志向の地域精神看護援助についての構成要素を明らかにし、この分析結果と先行文献との比較を基に仮モデルを構築することに取り組んだ。 平成26年度に精神科訪問看護に取り組む看護師21名に、文化的感受性を備えた対話を基盤としたリカバリー志向の地域精神看護援助についての半構成的インタビューと、そのうちの6名の看護師の訪問看護場面の参加観察(11場面)を行い、研究参加者毎にデータの個別分析を終えていた。 平成27年度は、21名の研究参加者のデータの全体分析を行い、最終的に「精神医療の環境と自分の実践の振り返り」、「対等な関係性の構築」、「利用者主体の対話の構築」、「生活者としての捉え直し」、「チームによる利用者の主体性の支持」、「利用者と利用者につながりのある人々の関係調整」という6つのカテゴリーを抽出することができた。そして、6つのカテゴリーの関係性を検討し、関連図を提示した。分析結果については、研究者参加者によるメンバーチェッキングを行い、内容や表現について再検討した。 次に、分析結果のカテゴリーとサブカテゴリーを、リカバリー志向の支援や精神科訪問看護に関する先行文献と比較検討した。その結果、カテゴリーの追加やカテゴリー名の修正は必要ないことを確認した。本研究結果には現れてこなかった「ピアとの交流を促す」という要素を、「利用者と利用者につながりのある人々の関係調整」のサブカテゴリーとして追加した。そして、カテゴリー関連図を基にして、文化的感受性を備えた対話を基盤としたリカバリー志向の地域精神看護援助仮モデルを提示した。さらに、この仮モデルを地域精神看護の専門家3名に提示して検討し、いただいた助言を基にして修正した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度は、精神科訪問看護に携わる看護師約10名を研究参加者として予定していたが、21名の看護師に研究参加いただけることになったために、データ収集に時間を要し、研究参加者ごとの個別分析を終えたところまでしか進めることができなかった。このため計画よりも進行がやや遅れていた。 平成27年度は、21名の研究参加者のデータの全体分析を行い、この結果と先行文献の比較検討を行い、これらを基にして文化的感受性を備えた対話を基盤としたリカバリー志向の地域精神看護援助仮モデルを構築し、専門家の助言を得て修正することができた。これらのことから、遅れを取り戻して順調に進展していると考えた。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、精神科訪問看護の経験年数が2年未満の看護師約5名に研究協力を依頼する。研究参加者には約90分の研修を実施し、文化的感受性を備えた対話を基盤としたリカバリー志向の地域精神看護援助仮モデルについて説明を行う。その後、約2カ月間、訪問看護の実践の中で仮モデルを活用していただく。2カ月の仮モデル活用期間終了後に、個別に半構成的インタビューを行い、仮モデルを活用する中での気づきや感想、仮モデルの活用のしやすさ、活用の難しさなどについてうかがう。インタビューを逐語録に起こし、質的帰納的に分析する。分析結果を踏まえて仮モデルを精錬する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究協力について検討いただいているいくつかの施設に、研究依頼と研究の概要説明に訪問するための日程を3月後半で調整していたため、そのための交通費等を確保していた。しかしながら、1施設への訪問は3月30日~31日に調整できたが、その他の施設は施設側の事情のために3月後半では日程調整ができず、平成28年度4月以降の日程で調整することとなった。そのため、確保していた交通費等が残ってしまい、次年度使用額が生じることとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度4月に研究協力候補施設に出張する際の交通費、資料準備にかかわる文房具購入費、研究依頼のやりとりに伴う郵送費等に使用することを計画している。
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