本研究は、研究者らがそれまでに行ってきた施設入所中の認知症高齢者を対象とする三次予防(認知症の重症化予防)に効果的な園芸活動を、小規模多機能居宅介護を利用しながら在宅で暮らす認知症高齢者を対象に実施し、認知症高齢者の在宅生活の継続に必要な生活能力の活性化に寄与する園芸活動の方法を検討しようとするものである。 対象となる認知症高齢者の生活能力の活性状況については、「最近一か月間の日常生活状況」を用いて、月に1回、日常生活状況を経時的に調査、分析した。 3年間、継続的に「最近一か月間の日常生活状況」を調査できたのは、80歳から88歳(平均85.75±2.66歳)の8名の女性であった。 「最近一か月間の日常生活状況」をカテゴリ別にみると、『健忘的症状』(p<0.05)、『生活意欲の低下』(p<0.01)、『よくある物忘れ症状』(p<0.01)は1年目に比べ、2年目と3年目は有意に増加していたが、『感情的反応』(p<0.01)は他のカテゴリと異なり、2年目と3年目は1年目に比べ、有意に減少していた。 以上のことから、長期にわたる園芸活動は、『感情的反応』の減少に効果的である可能性、『健忘的症状』『生活意欲の低下』『よくある物忘れ症状』等の認知機能や生活意欲の低下を次第に緩やかにする可能性が示唆された。今後さらにデータを蓄積するとともに、日常生活状況がバランスよく活性化できる園芸活動の実施方法を検討する必要がある。
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