研究課題/領域番号 |
26463565
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研究機関 | 高知県立大学 |
研究代表者 |
池添 志乃 高知県立大学, 看護学部, 教授 (20347652)
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研究分担者 |
時長 美希 高知県立大学, 看護学部, 教授 (00163965)
瓜生 浩子 高知県立大学, 看護学部, 准教授 (00364133)
高谷 恭子 高知県立大学, 看護学部, 講師 (40508587)
中野 綾美 高知県立大学, 看護学部, 教授 (90172361)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 看護学 / 医療を要する子どもと家族 / マネジメント力 / 養護教諭 / ケアガイドライン |
研究実績の概要 |
病気をもつ子どもと家族を支援した経験のある養護教諭、スクール・ソーシャル・ワーカー等52名を対象に、病気をもちながら学校生活を送る子どもと家族を支援していく中で大切にしている姿勢、支援内容について自記式アンケート調査を実施した。結果として、以下の視点が明らかになった。援助姿勢として、「病気をもつ子どもではなく、一人の人間としての尊厳の尊重、その子らしさの尊重」「意思決定を尊重」「信頼関係の構築」「ケアリング」といった倫理的視点が多く示されていた。また支援内容としては、「子どものもつ力、可能性を信じ希望を支える」「安全と安心を支え、社会とのつながりをもてるよう将来を見据えた支援者であり続ける」「子どもと家族のニーズを捉え、個に応じた環境を整える」「学校全体で支える体制をつくる」「家族と医療と学校が円滑なコミュニケーションのもとで協働する」「エビデンスに基づいた情報提供と説明責任を果たす」「養護実践の振り返りと専門性の強化を図る」といった内容が明らかとなった。 また講師として招聘した小児領域のNPでSchool Nurseでもあるカリフォルニア州立大学サクラメント校のDr.Bakerから、school Nurseの役割について、「健全な学校環境における健康と安全の推進にあたりリーダーシップを発揮する」、「実際に起きている健康問題及び潜在的な健康問題に対し、質の高い医療サービスを提供する」、「臨床判断を活用してケースマネジメント(ケアコーディネーション)を行う。学校と医療システム間のギャップを埋める」「子どもが安全かつ健全に学校で学習する準備を整えられるよう協力する」「特別な医療ニーズをもつ子どもたちを擁護しサポートする」という示唆が得られた。さらに医療を要する子どもに対しては緊急事態や災害状況に対する救急処置計画の検討の必要性も示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成26年度の目標は、「医療を要する子どもと家族のマネジメント力を育む養護教諭の支援方法を明らかにする」に対して、医療を要する子どもと家族の病気体験(病気の捉え、情緒的反応、ニーズ、生活への影響)、求める支援、②養護教諭及び他の専門職者の医療を要する子どもと家族のマネジメント力を育む支援方法(援助関係の形成方法、介入の意図、ケア介入方法)及び求められる支援を明らかにすることであった。 実践の場での活用可能性・有用性の高い「医療を要する子どもと家族のマネジメント力を育む養護教諭のケアガイドライン」の作成を行うためには、これまでに明らかになった点を参考にしながら、さらに先行研究や手記、また面接調査等により子どもと家族の体験の理解を深め、支援のあり方を探求していく必要があると考える。また、「医療を要する子どもと家族のマネジメント力を育む養護教諭のケアガイドライン」を構成するケア介入内容についても、経験年数5年以上で大学院を修了した県内外の養護教諭や経験豊かなエキスパートの養護教諭、小児専門看護師、家族支援専門看護師を対象に、子どもと家族のマネジメント力を育む支援(援助関係の形成、介入の意図と介入方法等)について面接調査を継続して行い、多様な視点からの支援方法を明らかにしていきたいと考える。これらの視点をガイドラインの作成に活かし、より妥当性、活用可能性のあるガイドラインの開発を行っていく必要があると考える。当初の予定より「医療を要する子どもと家族のマネジメント力を育む養護教諭のケアガイドライン」(試案)の作成時期が遅くなる可能性があるが、上記研究プロセスを行うことにより有用性の高いものにしたいと考える。そしてアクションリサーチを実施していくようにしたいと考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、さらに既存の文献検討や経験年数5年以上で大学院を修了した県内外の養護教諭、経験豊かなエキスパートの養護教諭に対して半構成的面接を行い、子どもと家族に対する支援方法(①援助関係の形成方法、②介入の意図、③ケア介入方法)について明らかにし、多様な視点からの支援方法を抽出する。また多職種連携の視点からも、学校保健関係者や小児専門看護師、家族支援専門看護師等医療専門職者等に対してインタビューを実施し、支援内容を抽出し、検討していきたいと考える。そして医療を要する子どもと家族のマネジメント力を同定し、これらを高める支援方法について検討する。具体的には、これまでの分析結果から導かれた養護教諭の支援方法に関してフォーカスグループ法、インタビューを実施し、内容の妥当性、信憑性を高め、洗練化を図る。対象者は、経験年数5年以上で大学院を修了した県内外の養護教諭、経験豊かなエキスパートの養護教諭グループ、小児看護専門看護師、家族支援専門看護師グループを想定している。 さらにこれらの分析結果をもとに、①援助関係の形成方法、②介入の意図、③ケア介入方法に分け、抽出し、「医療を要する子どもと家族のマネジメント力を育む養護教諭のケアガイドライン」(試案1)を作成する。さらに作成したケアガイドライン(試案1)を実践で活用してもらい、(試案2)を作成し、内容の妥当性、活用可能性のあるガイドライン開発につなげていく。対象は、同意の得られた5年以上の経験年数を有するエキスパートの養護教諭とする。これらの分析結果をもとに、ガイドライン(試案2)の洗練化を図る。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の予定よりも他県での面接調査が少なかったため、国内旅費および人件費・謝金についての実支出額が少なくなった。また物品費についてもプリンタートナー等予定していた消耗品の購入をしなかったため予定額よりも少なくなった。
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次年度使用額の使用計画 |
妥当性、活用可能性の高いガイドラインの作成のために、さらに既存の文献検討や特別支援コーディネーターを兼務する養護教諭、特別支援教育に携わる教員に対して半構成的面接を行う予定である。そのための調査旅費、情報収集(学会参加)ための交通費・宿泊費を予定している。また、消耗品費については、フラッシュメモリー、文具類(用紙・封筒・筆記用具等)、研究協力者へのお礼(3000円相当の文具)、プリンタートナー、教育・学校保健・小児関連書籍(医療的ケアが必要な子どもと家族、養護教諭や家族看護に関する書籍文献等)を予定している。謝金等については、アンケートのデータ入力・質的データ整理・英語文献整理・資料作成、データの掘り起こし[60分のテープの掘り起こし1万2千円程度]、専門的知識の提供(10000円)を予定している。その他として、印刷費、複写費を予定している。
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