研究課題
健康格差とソーシャルキャピタルの醸成に関する地区管理の観点からの保健師活動の課題及び活動方法を明らかにするために、人口規模により層化無作為抽出した841市町村の母子保健、健康づくり、介護予防の各分野担当保健師各1名を対象に郵送無記名自記式質問紙調査を実施した。平成27年度までに3分野共通及び各分野に特化した、活動方法に工夫が必要な地区・集団の特性を明らかにするとともに、【地区把握・地域診断】【健康課題への対応方法】【住民との協働】【体制整備】等の保健師活動の課題の側面及び【地区の課題の明確化】【保健事業提供方法】【住民又は住民組織への関わり方】等の活動の工夫の側面を明らかにした。また、保健師活動体制の類型化に活動分野や人口規模の視点が有用であり、それらから類型化を検討する必要性が示唆された。これを受け平成28年度は、人口規模別(1満未満、1~3万未満、3~5万未満、5~10万未満、10万以上)、活動分野別(母子、健康づくり、介護予防)、人口規模別かつ活動分野別に保健師活動の課題及び活動の工夫を分析し、15市町村の統括保健師等15名への半構成的インタビューの結果も併せて、その共通性と相違性について検討した。その結果、人口「1満未満」の町村は他の区分の市町村とは課題に対する認識が異なることや「3~5万未満」の市町は課題の認識が低いこと等人口規模別又は分野別の課題と工夫が明らかになり、さらに人口規模別かつ活動分野別では特に介護予防分野について人口規模による課題と工夫の相違点があった。結果の活動方法に工夫が必要な地区や集団の特性は健康格差が生じる可能性がある環境的要因を示唆しており、活動を創意工夫し健康格差を縮小するためのアセスメントの視点になると考える。また、結果は地区管理における活動分野と人口規模の視点の重要性を示唆し、課題と工夫はそれらの視点に応じた保健師の地区管理に役立つ。
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日本地域看護学会誌
巻: 19巻3号 ページ: 79-87