養護教諭は、学校の保健室に常駐する教諭であり、児童生徒の主訴や受傷機転等から、傷病の可能性や受診の要否、緊急度・重症度を判断することが求められているが、そのために必要なフィジカルアセスメント教育が行われてきたとは言い難く、教育内容についてはコンセンサスも得られていない。そこで、本研究は、学校管理下における児童生徒の傷病の可能性や緊急度の判断、医療につなぐまでの処置や対応などについて、養護教諭が的確に判断し対応できるよう「傷病についての養護診断と養護診断指標の開発を行う」ことを目的とし行った。はじめに、経験豊富な養護教諭や養護教諭養成大学に勤務する研究者で、保健室でみられる児童生徒の傷病について協議し、各々がその緊急度・頻度・重要度について採点した。その結果、合計得点の高かった17の傷病を調査対象と決定し、既知の症状や徴候を抽出、観察すべきアセスメント項目を抽出した。それを基に、現職養護教諭100名を対象に調査を行った。調査は正確なデータを収集するため思い出し法ではなく、6か月の間、保健室に留め置いた調査用紙に実際に観察した結果を記入するように依頼した。調査から、1.養護教諭のアセスメントの実態(観察の視点や項目、行った検査と実施率、判断の決め手とした観察項目)、2.各傷病の際に出現する症状や徴候の出現率、3.養護教諭と医師の判断の合致率、4.学校ならではのアセスメントについて結果を得た。そこで、データ数が多く、かつ学校ならではのアセスメントが行われている四肢の外傷について、再度半年間の留め置き調査を行い1103件のデータを収集した。分析の結果、養護教諭による外傷名の判断と医師の診断の一致率は83.2%であり、骨折を鑑別する際の指標として、既に医療機関では用いられることの少ない介達痛他、保健室では有用な指標や養護教諭のアセスメントの実態が明らかにした。
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