研究課題
小胞体ストレスにより活性が誘導するとされている転写因子CREBHの肝臓欠損マウスは食事誘導性の非アルコール性脂肪肝の病態を悪化させることを新たに見出した。CREBHは肝臓、小腸にのみ発現する転写因子である。しかし、現在までに全身の欠損マウスは作成されていたが、組織特異的なノックアウト(KO)マウスは作成されていなかった。本課題ではCRISPR/Cas9システムを用い、CREBH floxマウスを作成後、肝臓特異的Cre Tgマウスと交配し、肝臓特異的CREBH KO(LKO)マウスを作製した。このマウスは正常(WT)マウスと比べ、血中脂質(トリグリセライド、コレステロール、脂肪酸)で有意な高値を示した。しかし、肝臓中の脂質量には違いがなかった。LKOマウスではトリグセライドのクリアランス能が明らかにWTマウスに比べ低下していた。肝臓の遺伝子発現でLPL活性を上昇させるApoA4、ApoA5、Apoc2が低下したことに起因している。また、脂肪酸酸化の調節因子PPARa、Cpt1aが低下していたことも原因の一つと考えられた。さらにLKOマウスにメチオニン・コリン欠損食を負荷し、非アルコール性脂肪肝を発症させた。KOマウスでは正常(WT)マウスに比べ著しい脂肪肝、肝炎を呈し、肝臓でのCREBH欠損が非アルコール性脂肪肝を惹起することを明らかにした。その際、肝臓での遺伝子発現はCREBH KOマウスでは脂質合成遺伝子、炎症マーカーの発現上昇は軽微であったのに対し、繊維化マーカー(Tgfb1、Acta2、Col1a1)の増加が顕著であった。結果として、LKOマウスでは肝炎、肝障害が悪化した。
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Scientific Reports
巻: 6 ページ: 27857
10.1038/srep27857.
http://www.u-tsukuba-endocrinology.jp/