ラットに食餌タンパク質の量や質を変化させることで、肝臓特異的に脂肪が蓄積するモデル(低アルギニン食給餌)、内臓脂肪と異所性(肝臓と筋肉)脂肪が蓄積するモデル(低タンパク質食給餌)をもちいて、それぞれの組織への脂肪蓄積機構を調べてきた。トランスクリプトーム解析とメタボローム解析を組み合わせたオミクス解析により、低タンパク質食を摂取したラットでは糖質からの脂肪酸合成経路が促進していた。また、代謝中間産物の量の変化が認められた。そこで、標的遺伝子のヒストン解析、脂質代謝制御関連経路以外についても解析を行い、新たな標的遺伝子の抽出を行う予定であった。 低アルギニン食を摂取したラットは低アルギニン食を摂取した直後から肝臓からのVLDLの放出が抑制されており、VLDLの形成阻害が肝臓特異的な脂肪蓄積を引き起こしたものと考えられた。低アルギニン食の給餌は血中オロト酸濃度を上昇させることが報告されている。そこで、血中オロト酸濃度の上昇がVLDL放出抑制に関与しているかオロト酸添加食群と比較検討したところ、低アルギニン食群およびオロト酸添加食群ともに血中オロト酸濃度は給餌5日で増加していた。ところが給餌2週間後の血中オロト酸濃度は対照群と同程度であった。VLDL放出抑制にオロト酸だけでなくその代謝物も重要な役割をもつことが推測された。オミクス解析より抽出した標的のアポタンパク質の発現低下がどのようにVLDL形成を阻害するのか、培養細胞を用いて標的アポタンパク質を発現抑制しVLDLの数および大きさを調べる予定であった。今後、上記の解析を行い結果を取りまとめ、成果の発表を行っていく。
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