研究課題
胃発癌に影響を及ぼす食品については、食塩は胃癌の危険因子とされ、また茶カテキン、ビタミンCは抑制因子とされている。胃癌はHelicobacter pylori感染に伴う炎症性発癌であることが明らかにされつつあるが、本研究の目的はHelicobacter pylori感染胃炎モデルを用いて、胃粘膜の炎症の進展および胃発癌における食品の分子機構を解析するとともに、食品による違いの有無を検討することである。実験動物として5週齢の雄性スナネズミを用い、Helicobacter pyloriとして、胃癌より分離されたcagA陽性のF57を使用した。10%食塩食、茶カテキンなどの食品が通常食と比較し、胃粘膜の炎症や胃発癌過程に及ぼす影響について、病理学的評価および胃粘膜中のサイトカインなどの分子生物学的評価を行った。感染群で10%食塩食投与群、通常食投与群、茶カテキン投与群の順で、胃粘膜の炎症は強い傾向を認めた。しかし、炎症性サイトカインなどについては有意な変化は認められなかった。菌株などの因子の胃粘膜の炎症などに及ぼす影響は、食品が及ぼす影響より大きく、少なくとも本モデルでは前記の点について有意差が生じにくい可能性が考慮された。しかし、食塩や茶カテキンなどの食品が胃粘膜の炎症や胃の発癌過程を修飾する可能性は示唆され、菌株の違いや条件の違いなど他の因子の影響も十分精査しつつ、今後さらなる検討を行う予定である。
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Oncology Reports
巻: 35 ページ: 3241-3247
10.3892/or.2016.4717.