研究実績の概要 |
平成28年度は、フルクトースの投与経路(経口vs腹腔内投与)の違いに注目し、フルクトース腹腔内投与の際の血糖変化、肝臓内フルクトース含量および小腸および肝のChREBP標的遺伝子発現変化を検討した。フルクトース腹腔内投与の場合は直接門脈内へ流入するため、小腸を介さない経路のフルクトース代謝を直接評価できる利点がある。フルクトース腹腔内投与の場合、両群マウスで血糖の上昇が見られたが、野生型に比しChREBPノックアウトマウスで遅れて血糖が上昇した。さらに、肝臓内のフルクトース含量は経口投与と異なり、両者で増加するが、野生型マウスに比べ、ChREBPノックアウトマウスで4倍程度高値であった。さらに野生型マウスの小腸におけるChREBPの標的遺伝子(GLUT5,PKLR, KHK-C, GLUT2)発現は、経口投与と異なり腹腔内投与ではごく軽度の増加にとどまった。一方、野生型マウスの肝臓におけるChREBPの標的遺伝子(GLUT5, PKLR, KHK-C, GLUT2)発現は、経口投与と異なり腹腔内投与では経時的な増加が見られた。ChREBPノックアウトマウスの肝臓ではフルクトース腹腔内投与によるChREBP標的遺伝子の誘導は見られなかった。すなわち、フルクトース腹腔内投与により小腸をバイパスするとフルクトースは肝で(グルコースなどに)代謝されるが、ChREBPノックアウトマウスではKHK-C遺伝子発現の低下により障害されることが示唆された。平成26-28年度の研究結果から、小腸と肝臓はフルクトースの吸収および代謝に対するバリア臓器として重要であり、小腸と肝臓のChREBPはフルクトースの吸収代謝の両面で重要な役割を果たすことが明らかとなった。
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