研究課題/領域番号 |
26500008
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
橋本 道男 島根大学, 医学部, 准教授 (70112133)
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研究分担者 |
片倉 賢紀 城西大学, 薬学部, 准教授 (40383179)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 高齢者 / ヒト介入試験 / 認知機能 / 情動 / 縦断的疫学研究 / エゴマ油 / 超高水圧加圧玄米 / 脳トレ |
研究実績の概要 |
1)過去に行った横断・縦断的疫学調査、ヒト介入試験データの一元化と再解析:平成26年度に十分に解析が出来なかった島根大学の「コホート研究プラットフォームを活用した高齢者難治性疾患予防研究」のデータベースから、健常在宅高齢者1637名を抽出して、赤血球膜脂肪酸と情動(うつ、やる気)の関連性を検討した。やる気スコアには性差が見られ、女性高齢者は男性高齢者に比べてやる気が勝っていることが示唆された。また、やる気と炭水化物、葉酸、コレステロール、そして各種脂肪酸などとの間に負の相関が見られた。また、青魚の摂取頻度の増加により、うつとやる気スコアが低下し、これらの成果には地域差が認められた。 2) 新規な認知症・うつ病予防栄養素材の探索と実証:2)-1:玄米は、γ-アミノ酪酸(GABA)や食物繊維などの機能性成分を多く含むが、長期間摂取することが困難であった。玄米を超高水圧で加圧して得られた超高水圧加圧玄米(以下、加圧玄米と略す)は、玄米の機能性成分に加えて、フェルラ酸、各種ビタミンB群、イノシトール、などを多く含み、柔軟性が増し、長期間摂取が可能となった。この加圧玄米を摂取した加齢促進マウスは、記憶学習能力が改善し、脳内のアミロイドβタンパク質の低下が認められ、摂取による認知症予防の可能性が示唆された。目下、健常在宅高齢者を対象にして、この加圧玄米の長期摂取による認知機能・情動に及ぼす影響に関するヒト介入試験を継続中である。 2)-2:平成27年9月からエゴマ油と脳トレを組み合わせた、新規な認知症予防法の開発を、健常在宅高齢者を対象としたヒト介入試験を継続中である。6ヶ月経過時点では、この新規な方法により、前頭葉機能試験「知的柔軟性」の項目のスコアが増加し、さらには血圧の低下や、糖代謝の改善の可能性などが見出されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
共同研究者である片倉賢紀助教が、平成27年9月から城西大学に准教授として転出し、遺伝子多型を解析するマンパワーが不足した。目下、後身を探し中である。
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今後の研究の推進方策 |
1) 平成27年度の未使用額は、予定されている遺伝子解析に使用する。 2) 新規な認知症・うつ病予防栄養素材の探索と実証:平成27年度から継続中である健常在宅高齢者を対象とした2つのヒト介入試験:1)超高水圧加工玄米による認知症予防の検証、2)エゴマ油と脳トレを組み合わせた新規な認知症予防法の開発、を行う。試験終了後には効果を解析し、多角度からの検証を行う。 3) 不飽和脂肪酸合成関連酵素、肥満・高血圧・うつ病関連酵素の遺伝子多型と認知機能・うつ症状との関連性の検討:平成26年度からおこなっている検討課題を継続して行う。 4)テーラーメイド栄養学の試み:平成26, 27年度に遺伝子解析を行った社会医療法人仁寿会関連施設の高齢者向け居住系施設入居者を対象として、テーラーメイド栄養学を検証するために、遺伝子多型に関連した栄養素をより多く摂取することにより、遺伝因子と食生活習慣による認知症やうつ症状、さらには生活習慣病へ影響を及ぼすか否かを検討するためのヒト介入試験を行う。介入候補栄養素:n-3系脂肪酸、葉酸、ビタミンB6等、介入期間:18カ月、治験者数: 3群(15名/群)ので計45名。栄養素を含めた食事内容のデザインは研究協力者である大野管理栄養士が担当し、入居者の健康・検診支援は仁寿会理事長であり研究協力者の加藤節司院長が行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
遺伝子多型解析を担当する共同研究者である片倉賢紀助教が、平成27年9月から城西大学に准教授として転出し、解析できなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度の未使用額は、予定されている遺伝子解析に使用する。
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