研究課題
「アレルギー発症・出生コホート(千葉大・下条教授)」より提供される検体(母乳などを含む)を用いて、DAMPs活性の測定実験を行う事により、免疫系の入り口である自然免疫系を活性化し、炎症反応を引き起こす活性の存在、強度、パターンを測定する。出生コホート・グループ(下条教授)との密接な情報交換により、臨床症状との関連を探る。また質量分析グループ(津山先生)との連携により、母乳中の原因物質の同定を目指す。メタボロームの方法論としては、大きく2つ(targeted, non-targeted)に分かれるが、その特に低分子量物質に的を絞ったTargeted-metabolomeのスタイルで行う。そのために質量分析グループ(津山先生)との緊密な情報交換が重要になる。さらに同定された原因物質を用いてマウス実験系を立ち上げ、マウスを用いた個体レベルの解析を行い、生体レベルでの原因物質(インプット)と、アレルギー症状(アウトプット)との間の免疫メカニズムの解明を行うことを目標とした。下条教授より提供された第1次出生コホートを用いて、DAMPs活性測定を行った。その結果、アトピー性皮膚炎(AD)群でのみDAMPs活性を見出した(検体全体の約10% 5検体陽性/75検体)。その活性の原因物質の同定を、低分子量物質を中心に検索したところ、アミノ酸、活性アミン、など多くの物質は変化がなかったが、脂質(脂肪酸)群にその差を認めた。PCA解析でも優位な差を認めた。特に、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の比率に差があることを見出した。そこで、マウス個体を用いたモデル構築を試みた。
1: 当初の計画以上に進展している
現在までのところ、マウスを用いたモデル実験において、餌に飽和脂肪酸を加えることにより、皮膚の湿疹病変が起こせることを確認した(5ヶ月間観察の結果)。また不飽和脂肪酸ではその病変は起きず、また飽和脂肪酸によって起きる皮膚湿疹病変を、不飽和脂肪酸の添加で予防できることがわかった。その免疫学的解析を、現在、行っている。しかし、ヒト・コホートの条件を考えると、マウス実験でも、乳幼児と母乳の実験系を行う必要がある。
今後の研究項目は、大きく分けると下記の3点が中心となると考えている。その中でも特に i)の解析に力を注ぎたいi)アトピー様・皮膚湿疹病変は、皮膚の炎症であり、そのアウトプットがどのような免疫学的機構から起きるかを解明する。特に、母乳として経口投与された脂肪酸が、消化管でどのような免疫反応を起こし、それがどのように皮膚の炎症反応につながるか? 疑問である。ii)in vitroのDAMPs活性を指標に検索したので、我々が見ているのは「自然免疫系」の活性化能であったはずなのに、なぜ獲得免疫系B細胞のIgE産生が増加したのであろうか?iii)In vitroのDAMPs活性測定系において、飽和脂肪酸の添加によりどのようなシグナル伝達経路をたどり、インフラマソーム活性化が起きたのであろうか?上記の疑問を解くことに焦点を絞りたい。
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