研究課題/領域番号 |
26500010
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
菅野 雅元 広島大学, 医歯薬保健学研究院, 教授 (40161393)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | アレルギー / 自然免疫系 / アトピー性皮膚炎 / 自然リンパ球 / サイトカイン / メタボローム解析 / IgE / インフラマソーム |
研究実績の概要 |
自然免疫系の活性化物質はPAMPs (pathogen-associated molecular patterns)とDAMPs (Damage-associated molecular patterns)に大別される。DAMPSは一般に自己の組織破壊によって生じる活性物質(=Dangerシグナル)である。我々はこれまでに、アレルギー疾患の発症機構とDanger仮説(P.Matzinger)の関係に注目し、母乳栄養母子のコホート研究において、アトピー性皮膚炎(AD)群母乳(初乳)の1-2割にDAMPs活性を検出している。質量分析を用いたtargeted metabolomics解析の結果、この原因物質は飽和脂肪酸群であり、不飽和脂肪酸との比率が重要である事がわかったであった。In vivo実験として、HR-1マウスを用い、ヒト・コホートと同様な条件をマウスで作り出し実験を行った。つまり、授乳期間中に新生仔を飽和脂肪酸リッチな餌で飼育されている母親からの母乳で育てる系(baby-swapping)で、実際に3-4ヶ月後にマウスが皮膚病変をきたすマウス・アトピー性皮膚炎実験系の確立に成功した。この系を用いて、免疫学的な解析を行ったところ、消化管の自然リンパ球(Innate Lymphoid Cell;ILC)の3型(ILC3)の増加、炎症生サイトカインの産生を検出した。従来、アトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患は2型のリンパ球(自然免疫系であればILC2、獲得免疫系であればTh2)が主役であると言われてきたが、我々の系ではILC3が重要のようである。次年度にさらに解析を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
・in vitro実験系では、特に、インフラマソーム活性化機構における、ミトコンドリア、小胞体(小胞体ストレス)の関与を検討した。 ・in vivo実験系では特に、飽和脂肪酸投与と皮膚疾患との関連を検討した。 皮膚疾患が出現した場合には、その免疫学的解析を行った。特に、皮膚に浸潤しているリンパ球解析、消化管免疫系のリンパ球解析を行った(現在進行中で次年度に結果を報告)。一般的に、アトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患発症には2型免疫反応が関与していると言われている。しかし、我々のマウス実験系では皮膚や消化管のILC2には変化がなかった。しかしILC3がIL-17を産生している事が判明した。現在、その機構や詳細について次年度に解析する予定である。 また、アトピー性皮膚炎に特徴的である末梢血中IgE値の上昇が再現できるかどうかも検討したところ、血中のIgE値が上昇していた。これもさらに来年度にかけて再現性・詳細な解析を行う。
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今後の研究の推進方策 |
・最初のコホート研究は、初乳のみの1点であったが、第2弾コホート研究として、継時的な膨大なサンプルを用いたDAMPs活性解析を行う。約1000検体以上のDAMPs活性を測定した。考えられうるすべての継時的時的なパターンが出て来た。臨床的なパラメーターとの付き合わせは、次年度に予定している。 ・また上記のin vivo実験(マウスモデル、baby-swapping実験)で、自然免疫系のどのような細胞が炎症生サイトカインを産生するのか?その遺伝子発現解析を行う。さらに消化管と皮膚のリンパ球の関係を検討する。
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