研究課題
自然免疫系の活性化物質はPAMPs (pathogen-associated molecular patterns)とDAMPs (Damage-associated molecular patterns)に大別される。DAMPSは一般に自己の組織破壊によって生じる活性物質(=Dangerシグナル)である。我々はこれまでに、アレルギー疾患の発症機構とDanger仮説(P.Matzinger)の関係に注目し、母乳栄養母子のコホート研究において、アトピー性皮膚炎(AD)群母乳(初乳)の1-2割にDAMPs活性を検出している。H28年度中に継時的な検体、約2500検体の活性測定が終了した。 その結果、アトピー性皮膚炎群の母乳の約95%は、授乳期間中の6ヶ月間のどこかで(初乳、1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月の4点のどこかで)必ずDAMPs活性が陽性であることがわかった。質量分析を用いたtargeted metabolomics解析の結果、この原因物質は飽和脂肪酸群であり、不飽和脂肪酸との比率が重要である事がわかった。In vivo実験として、HR-1マウスを用い、ヒト・コホートと同様な条件をマウスで作り出し実験を行った。つまり、授乳期間中に新生仔を飽和脂肪酸リッチな餌で飼育されている母親からの母乳で育てる系(baby-swapping)で、実際に3-4ヶ月後にマウスが皮膚病変をきたすマウス・アトピー性皮膚炎実験系の確立に成功した。この系を用いて、免疫学的な解析を行ったところ、消化管の自然リンパ球(Innate Lymphoid Cell;ILC)の3型(ILC3)の増加が、従来言われてきた2型自然リンパ球(ILC2)よりも早期に炎症生サイトカインの産生を行うことを検出した。現在、「その変化が発症の原因であるか否か?」「皮膚と消化管のILCの関係は?」などの問いに答えるための追加実験を行い、論文発表する予定です。
すべて 2017 2016 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 4件、 招待講演 2件) 備考 (1件)
EUROPEAN J. IMMUNOL.
巻: 46 ページ: 1-1274
10.1002/eji.201670200
https://www.hiroshima-u.ac.jp/med/research/lab/basis/Immunology