研究課題/領域番号 |
26500012
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
伊藤 美紀子 兵庫県立大学, 環境人間学部, 准教授 (50314852)
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研究分担者 |
坂上 元祥 兵庫県立大学, 環境人間学部, 教授 (20283913)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | リン代謝異常 / 慢性腎蔵病 / 異所性石灰化 |
研究実績の概要 |
血液透析患者の死因は、心血管病変が約40%を占め、高リン血症が引き起こす異所性石灰化が主な原因である。透析導入時には、約半数の患者で既に異所性石灰化が進行していること、またまた腎機能正常者においても血中リン濃度正常高値が心血管リスクとなる事から、CKD早期ならびに健常人においても日常的なリンの栄養管理が重要となってきた。血管石灰化にはリン代謝が深く関与しており、これらの代謝には腎臓・骨・血管の密な臓器相関が認められることから、骨におけるリン代謝が、血管での異所性石灰化に関与しているのではないかと考え、骨吸収を担う破骨細胞に注目してリンチャネルの検討を進めている。 In vitroでは破骨細胞様細胞ならびに血管石灰化のモデルとして正常ヒト大動脈血管平滑筋細胞を用いて候補分子の解析を行った。またin vivoとして高リン食、低リン食で飼育したマウスの骨髄から構築したprimary破骨細胞を用いて発現検討を行った。候補とした2つの分子は細胞膜に発現、破骨細胞の分化後に発現が上昇し、血管石灰化細胞にも発現が認められたが、血管石灰化初期からの誘導はみとめられなかった。また、リン調節ホルモンFibroblast Growth Facter23(FGF23)やリン濃度による誘導もみられなかった。これらのことから2つの候補分子は、骨と血管の共通性は示されたが、石灰化ならびにリン調節との関連性は不明である。 今後も新規候補分子の洗い出しを含めて継続検討を行い、骨と血管で機能するリン調節因子を明らかにし、異所性石灰化メカニズムを解明することで、慢性腎臓病(CKD)患者における早期からの異所性石灰化の抑制をめざす栄養療法の開発につながると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで2つの有力な候補分子の詳細な解析を進めてきた。現在もこれらの候補分子の解析を進めるとともに、新たな候補分子の発見を目指して、血管石灰化の経時的変化による詳細なDNAマイクロアレイを実施するなど検討を行っている。あと2年の研究期間のあいだに、当初の計画を進めていく予定である。現在次の展開の準備を図っている。これらの解析から、骨・血管・腎臓の臓器相関を示す新規調節分子とその分子機序を明らかにしていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
さらなる候補分子の洗い出しと解析を進める。 リン調節ホルモンとして、副甲状腺ホルモン(PTH)やビタミンDが知られており、リンの調節はカルシウムの調節機構に付随していると考えられてきた。しかしながら、近年、骨と腎を結ぶFibroblast Growth Facter23(FGF23)が新規リン調節ホルモンとして、またFGF23の機能発現には老化促進因子として知られていたKlothoが関与することが明らかになっている。またKlothoは腎遠位尿管に発現してFGF受容体複合体としてFGF23の受容体となる他、分泌型Klothoが存在するが、その機能が未だ不明である。これらリン調節ホルモンとリンチャネル分子との関連を明らかにすることを目的として検討を行う。 1)破骨細胞様細胞を用いて、これらホルモンを直接添加し、リンチャネルに対する効果を検討する。短期的または長期的の変化を検討する。2)細胞ならびにリン濃度を変えて飼育した実験動物、腎不全モデル動物においてタンパク質レベルでの関連性検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
ほぼ予定通り消化した。残額が出たのは3月に出張をいれており、予算を大目に取っていたためである。
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次年度使用額の使用計画 |
消耗品などで使用していきたい。
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