研究課題
腎臓機能が廃絶し血液透析に至った患者の死因の約40%は心血管疾患であり、高リン血症が持続することにより生じる血管の異所性石灰化が主な原因である。透析導入時には約半数の患者で既に異所性石灰化が進行し生命予後と関連する事、また腎機能正常者においても血中リン濃度正常高値が心血管疾患のリスクとなることから、慢性腎蔵病(CKD)早期ならびに健常者においても日常的なリン管理が重要となっている。血管石灰化には生体内のリン代謝が深く関与しており、これらの代謝には腎臓・骨・血管の密な臓器相関が報告されている。そこで、骨におけるリン代謝調節機構が血管での異所性石灰化に関与しているのではないかと考え、骨吸収を担う破骨細胞に注目した新規リン調節因子の検討から、血管石灰化発症メカニズムの解明と栄養との関連を明らかにし、栄養療法につなげることを目的とした。マクロファージ由来RAW264細胞にRANKLを添加して作成した破骨細胞の分化後、ならびにヒト大動脈血管平滑筋細胞AoSMCのリン添加による石灰化後に発現が共通して上昇する遺伝子をマイクロアレイにより解析し、リンを輸送する可能性のある候補分子を明らかにした。本候補分子に関して様々な検討を行った結果、分化や石灰化に伴って遺伝子・タンパク質レベルでの発現上昇と、膜での局在等をin vivoで明らかにした。また、アデニンを用いたCKDモデル動物を作成し、血管石灰化を生じさせたラットの大動脈血管を解析した。骨芽細胞用マーカーRunX2遺伝子の発現と候補分子の発現量が比例していた。また、血管を石灰化の指標であるVon Kosssa染色と候補分子の免疫染色を行った結果、石灰化部位での発現が観察された。以上のことから、さらなる検討は必要であるが、今回明らかにした候補分子は血管石灰化に関与している可能性が高い事が示された。
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