研究課題/領域番号 |
26500015
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
早田 邦康 自治医科大学, 医学部, 教授 (00221341)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ポリアミン / 遺伝子メチル化 / 異常メチル化 / 老化 / 長寿 / 生活習慣病 |
研究実績の概要 |
ヒトの正常細胞である冠動脈内皮細胞、ヒト乳腺上皮細胞、単核細胞を用いて、ポリアミンによる遺伝子のメチル化への影響を検討することを目的にした研究である。それぞれの細胞を、ポリアミン非添加、ポリアミン添加、ポリアミン合成酵素阻害剤(difluoromethylornithine (DFMO))添加、ポリアミン合成阻害剤とポリアミンを添加した培養液で培養して検討に用いる計画であった。それぞれの条件で培養した細胞のポリアミン濃度、DNAメチルトランスフェラーゼ(Dnmt)の活性、およびメチル化マイクロアレイを用いて遺伝子全体のメチル化の状態を確認する計画であった。正常細胞の発育が極めて緩徐であり研究に適さない細胞があるために、現在は正常乳腺上皮細胞とJurkat細胞を用いて、上記の培養条件を設定した。ポリアミンを加えてポリアミン濃度が上昇した細胞では、3種類の主要なDnmt(Dnmt1,3a,3b)の中ではDnmt3aもしくはbの酵素活性(各タンパク量あたりの活性)が増強した。反対にDFMOを加えてポリアミン合成を阻害した細胞では細胞内ポリアミン濃度が低下し、Dnmt1および3の両者の活性が低下する傾向にあった。しかし、いずれの場合にもDnmtのタンパク量には大きな影響を及ぼさなかった。さらに、現在は細胞量を十分に増やし、Dnmtの活性に強い影響を及ぼすdcSAMおよびSAM量の変化、さらにはSAMDCにおよぼす影響を検討しており、測定方法を確立した。間もなく、これらのデータも得ることができる。 高ポリアミン餌がマウスの老化や寿命に及ぼす影響に関しては、現在のマウスの飼育を継続しているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
実験計画書では、冠動脈内皮細胞、ヒト乳腺上皮細胞、単核細胞などを用いてポリアミンの細胞外からの投与によって生じるポリアミン代謝に関連する物質や酵素活性の変化を確認し、異常メチル化に及ぼす影響を検討する予定であった。しかし、ヒト乳腺上皮細胞以外の正常細胞は発育が極めて緩徐であり、酵素活性や物質の濃度の測定などの実験に必要な細胞数を得ることが極めて困難(必要な細胞を当方の研究室を用いて行うと細胞数を確保するためだけに3年近くの年月が必要)なことが判明した。よって、現在はヒト乳腺上皮細胞とJurkat細胞を用いて検討している。研究期間内にポリアミン合成に関する物質および酵素の量の変化、および酵素活性の変化が測定できる。ただ、メチル化の計測は現在費用が高額になっており、本研究費では支払が困難となり、今後資金面での検討が必要になった。 高ポリアミン餌によるマウスの長寿実験は現在も行っているが、検討の経過中にマウスが早期大量死亡する事態が生じ、実験を中断せざるを得なくなった。ただ、この検討は10数年前から繰り返し行っている実験であり、これ以前にも一度だけ同様のトラブルに見舞われたことがある。再度、施設の消毒を行い、体制を立て直したうえで、現在も検討を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
現在でも予定通りの研究を進めている。in vitroでの検討では、細胞増殖速度があまりにも遅いという問題を確認したために、現在は用いる細胞を2種類に限定し、計画通りの実験が進行中である。ただ、資金不足と検査費用の高騰により遺伝子の異常メチル化の計測が本研究費では困難となっている。各種条件で培養した細胞はストックしており、ポリアミンによる代謝の変化も明確にとらえることができているので、新たな資金の獲得を待って遺伝子のメチル化に及ぼす影響とポリアミンによって制御される遺伝子の中で、アンチエイジングや生活習慣病にかかわる遺伝子を広い挙げる計画である。 また、高ポリアミン餌によるマウスのアンチエイジングと遺伝子の異常メチル化に及ぼす影響を検討するために、マウスの飼育を継続している。この検討に関しても資金不足と検査費用の高騰により本研究費での実施が困難となっている。新たな資金の獲得を待って検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度の未使用額は少額であったために、物品等の購入などは行わず、次年度において必要な消耗品の購入に充てることにした。
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次年度使用額の使用計画 |
一般的試薬などの購入費用に充てる。
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