研究課題/領域番号 |
26500016
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研究機関 | 女子栄養大学 |
研究代表者 |
川端 輝江 女子栄養大学, 栄養学部, 教授 (80190932)
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研究分担者 |
仲井 邦彦 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00291336)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | n-3系脂肪酸 / 出生コホート / 母乳 / 不飽和脂肪酸代謝酵素 / トランス脂肪酸 |
研究実績の概要 |
本研究では、妊娠期間ならびに授乳期間中の母親の魚介類摂取と、出生児の成長と発達の関連性を検証する。魚介類摂取は食物摂取頻度調査によって把握すると共に、血液や母乳中の脂肪酸組成結果を生体指標として用いる。 研究フィールドは、環境省が平成23年1月より開始した「子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)」の追加調査(宮城ユニットセンターによるサブコホート)として設定された。対象者は、母体血(妊娠24~30週)及び臍帯血の赤血球中多価不飽和脂肪酸(PUFA)分析を行った宮城県沿岸部在住の母児である。 本研究1年目である平成26年度は、約500名の母親から出産後7ヶ月目の母乳を、さらに、一部の母親からは出産後1ヶ月目の母乳を採取した。その上で、授乳期間中の母親の魚介類摂取及び児のPUFA摂取を推測するために、母乳中の脂肪酸分析を実施した。 2年目の平成27年度においても、母乳分析を引き続き実施した。さらに、体内PUFA量は食事からの取り込みだけではなく、体内合成によっても増えることから、同意の得られた対象者(母親)の脂肪酸代謝関連酵素の一塩基多型をTaqMan法により測定し、体内合成についても検討を行なった。その結果、脂肪酸代謝酵素遺伝子に変異がある対象者では、母体血、臍帯血、母乳のいずれにおいても、胎児や乳児に必要とされるアラキドン酸やDHA組成が低下していることが認められた。さらに、DHA代謝に対して影響を及ぼす食事因子としてトランス脂肪酸の摂取が考えられるため、血漿中トランス脂肪酸の量についても分析を行ってきた。現在も、ゲノム及びトランス脂肪酸分析については、継続して測定中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
東北大学医学系研究科にて気仙沼市および石巻市に、それぞれ設置したサブセンターを、研究拠点・対面調査の会場として活用し、平成26年度に引き続き順調に対象者の身体計測、発達検査、質問紙調査を進めてきた。 母乳採取は東北の対象地域より冷凍便で分析場所である女子栄養大学に送付され、直ちに冷凍保管(-80℃)し、定期的にGLC測定を行ってきた。そのため、送付された母乳について順調に分析を実施してきたことから、平成27年度で母乳分析はすべて完了した。 脂肪酸代謝酵素遺伝子多型解析についての同意は、母乳採取7ヶ月の際に行い、保管されている血液(白血球)からDNA抽出を行い、脂肪酸代謝酵素遺伝子多型の分析を自治医科大学で実施してきた。すでに半数以上の母親のゲノム解析が完了している。血漿トランス脂肪酸分析についても約300名の母児ペアについて完了し、分析結果の解析も現在進めているところである。 母乳やゲノム等の分析と同時に、宮城ユニットセンターでは研究分担者によって、生後24ヶ月時の新版K式発達検査及びPUFA摂取量調査を実施してきた。 以上、2年目である平成27年度については、予定通り研究を進めることができたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度においても、引き続き母親のゲノム解析を行い、母親あるいは児の体内におけるアラキドン酸やDHA合成が、母体血液および母乳中の脂肪酸組成にどのように影響しているか食事との関連性を含めて解析を進める。さらに、血漿中トランス脂肪酸分析を継続して行い、トランス脂肪酸摂取が児の成長・発達に与える影響について検討を行う。 出生後のPUFA摂取量を推定するために、我々は生後7ヶ月時に授乳調査と共に、銘柄を含む調製粉乳の摂取量調査を行ってきた。今後はこれらの質問紙の解析を行い、母乳および人工乳摂取を把握すると共に、母乳脂肪酸分析値との関連性を検討する。 平成28年度は本研究の最終年度に当たることから、母体血や臍帯血、母乳中のトランス脂肪酸を含む一価及び多価不飽和脂肪酸組成のそれぞれの関連について、遺伝子多型の影響も考慮し検討を行なう。さらに、成長・発達検査結果から、母親由来のアラキドン酸やDHAのベネフィットを検証する。魚介類摂取量を推定し、母親や児にとってのより適切な食生活を提言する。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年同様、母乳分析はガスクロマトグラフィーで行なってきたが、可能な限り1回の処理で行なうサンプル数を増やすことで効率化を図った。また、分担研究者との打ち合わせはメール等で行い、あらためて会議の開催は実施しなった。
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次年度使用額の使用計画 |
身体計測および発達検査、授乳および調製粉乳摂取量調査結果の解析に必要な人件費、ゲノム及び血漿中トランス脂肪酸分析に必要な実験器具、試薬等の消耗品及び人件費、研究打ち合わせのための交通・宿泊費等、その他(論文校正等)の項目について使用予定である。
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