研究課題/領域番号 |
26500020
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
室田 佳恵子 近畿大学, 理工学部, 准教授 (40294681)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | リン脂質 / 小腸 / DHA / 細胞間透過性 |
研究実績の概要 |
今年度は、多価不飽和必須脂肪酸であるDHAを含むリン脂質が中枢神経系へのDHA供給源として有効であるかどうかを明らかにするため、DHA含有脂質の小腸における消化吸収を検討した。DHA含有脂質として、魚油(主にトリグリセリド)ならびに魚卵由来リン脂質(主にホスファチジルコリン)を用いた。これらの脂質は、DHAを主としてグリセロールのsn-2位に結合した分子形態をしている。これらが膵酵素によりどのような消化を受けるかを調べた結果、魚油(トリグリセリド)は膵液を用いたin vitro消化により、DHAを効率的に遊離脂肪酸へと変換することが確認された。一方、魚卵リン脂質(ホスファチジルコリン)の場合、膵液によってリゾ体と遊離脂肪酸への消化分解が効率的に起こるにも関わらず、DHAはほとんど遊離しないことを見出した。一般に膵液中のリン脂質分解酵素はホスホリパーゼA2であり、sn-2位のエステル結合を加水分解するが、魚卵リン脂質の場合、sn-2位に多価不飽和脂肪酸が結合しているため、sn-1位の方が加水分解され易いことが示唆された。これはホスホリパーゼA1とA2による消化性の比較からも示唆された。(論文投稿準備中) また、小腸上皮のモデルとなるCaco-2細胞を用いてリゾホスファチジルコリン(LPC)とリゾホスファチジン酸(LPA)が細胞間透過性に及ぼす影響を調べたところ、LPCが細胞間透過性を亢進させるのに対し、LPAは受容体を介して細胞間透過性亢進を減弱させる作用を発揮した。LPCの作用は細胞内カルシウム上昇とRho/ROCK系の活性化を介したものであったが、LPAはカルシウムシグナルには関与していないことが示唆されており、引き続き作用機序の解明を進めていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初研究計画のうち、脂肪酸供与担体としてのリン脂質の有効性の検討、および、小腸上皮透過性に対するLPAの作用、に関する研究を主に実施した。前者はほぼ計画通りの進行状況であり、後者については計画よりも速い進行状況を維持している。機能性食品成分の腸管吸収におよぼす共存脂質の影響に関しては、コントロールとなる実験をほぼ終了し、現在は脂質投与の実験条件確立を行っており次年度のスムーズな進行が望める状態である。
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今後の研究の推進方策 |
脂肪酸供与担体としてのリン脂質の有効性については、現在同脂肪酸組成のリン脂質異性体を入手しようとしており、これを用いて研究を進める予定にしている。小腸上皮透過性に対するLPAの作用についても、脂肪酸組成の異なるLPAを用いてリン脂質構造の影響を調べながら、さらにLPAの作用機序を解明していく予定である。また、培養細胞系および動物実験において、フラボノイドやカロテノイドの吸収性に及ぼす種々の脂質の同時投与実験を行い、吸収性評価を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
概ね予定通りの金額を使用して研究を行ったが、当初予定していた旅費(20万円計上)よりも使用額が小さかった。なお、初年度に申請した予算使用内訳において、「物品費」と「その他」の金額を誤って逆に入力してしまっていた。
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次年度使用額の使用計画 |
成果発表(論文投稿)のための予算は2年目に予定していなかったが、研究が順調に進行しており、平成27年度に論文投稿を準備している。繰り越した予算はそのために使用する予定である。
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