研究課題/領域番号 |
26500021
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研究機関 | 神戸女子大学 |
研究代表者 |
置村 康彦 神戸女子大学, 家政学部, 教授 (30204100)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 分岐鎖アミノ酸 / 成長ホルモン / 筋萎縮 / mTOR |
研究実績の概要 |
正常のラットにおいて分岐鎖アミノ酸 (BCAA) はグルココルチコイド誘導性の筋萎縮を抑制することを、すでに私どもは報告した。しかし、成長ホルモン(GH)を欠くspontaneous dwarf rat (SDR)では、BCAAの効果は明確でなかった。BCAA が作用するにあたって必要な細胞内基盤を形成するためには、GH が必要なのだろうと私どもは解釈し、その機構を明確にすることを本研究の目的とした。 GH欠乏がBCAA作用不全の真の原因であるかどうか確認する目的で、SDRにGHを2週間持続投与したところ、ヒラメ筋,長趾伸筋の筋線維断面積は増加した。BCAA投与によって、筋線維断面積はさらに増加はしなかったが、グルココルチコイドによる筋線維断面積の減少はBCAAによって抑制された。 筋蛋白合成はS6 kinase (S6K) および4E-BP1のリン酸化を介して促進されるが、SDRでは、BCAAによるS6Kおよび4E-BP1のリン酸化が明瞭ではなかった。一方、SDRにGHを2週間補充することにより、これらのリン酸化反応は回復した。S6K, 4E-BP1はmTOC1によりリン酸化されるが、mTORをはじめとするmTORC1の構成タンパク量は、GHが欠けていないSDラットに比べ、SDRではむしろ多く、GHはmTORC1の構成タンパク量を増加させることなく、BCAAによるmTORC1の活性化を促進する可能性が示唆された。 筋タンパク分解を促進するユビキチン・プロレアソーム系、オートファジー系のグルココルチコイドによる活性化およびBCAAによる抑制も、SDRでは明確でなく、GHを補充したSDRでは明確であった。これらもmTORC1によって調節されているものが多く、SDRではmTORC1の機能障害が存在し、GHによって是正される可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
次の点(1~ 3)が明確になり、目的に記したとおり、BCAA が作用するにあたって必要な細胞内基盤を形成するためには、GH が必要であるという仮説が支持され、その機構に関して新たな知見が得られたことから、おおむね順調に進展していると判断した。 1. GH欠乏が、SDR骨格筋におけるBCAA作用不全の原因であることを明らかにした。 2. GHは、BCAAによるmTORC1活性化のために必要である可能性を見出した。 3. GHはmTORC1構成タンパク量を増加させず、mTORC1機能に影響する可能性を示した。
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今後の研究の推進方策 |
次の点に注力する。 1. BCAAが筋に対する作用を発揮するため、GHはどのような仕組みでmTORC1作用を調節しているのか、さらに明確にする。 2. BCAAの作用だけでなくグルココルチコイドの筋への作用も、GHを欠くSDRではSDほど明確ではなかったことから、グルココルチコイドの作用にもGHは影響している可能性がある。この機構についても明確にする。
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次年度使用額が生じた理由 |
人件費と物品費に予算を使用する予定であったが、以前に購入した物品が残っており、これを使用したため次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額は繰り越し、主に人件費として使用したい。
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