正常のラットにおいて分岐鎖アミノ酸 (BCAA) はグルココルチコイド誘導性の筋萎縮を抑制するが、成長ホルモン(GH)を欠くspontaneous dwarf rat (SDR)では、BCAAの効果は明確ではない。BCAA が作用するためにはGH が必要なのだろうと私どもは解釈し、その機構を明確にすることを目的に本研究を申請した。 まず、GH欠乏がSDRにおけるBCAA作用不全の真の原因であるかどうか確認した。SDRにGHを2週間持続投与したところ、デキサメサゾン(Dex)によるヒラメ筋,長趾伸筋の筋線維断面積の減少はBCAAによって抑制されるようになった。SDRではBCAAによるS6Kおよび4E-BP1のリン酸化が明瞭ではなかったが、SDRにGHを2週間補充することにより、これらのリン酸化反応も回復し、GHはBCAAによるmTORC1の活性化を促進する可能性が示唆された。 BCAAトランスポーターであるLAT1のノックアウトマウスでは、BCAAによるmTORC1活性化が不十分であることが報告されていることから、上記BCAAの不応性にLAT1の関与を検討した。その結果、GHはIGF-Iを介して筋細胞LAT1を増加させ、筋細胞増殖を促進させることを見出した。 平成28年度には、他のGH/IGF-I作用がBCAAの反応性回復に関与しないか検討を行った。GHを2週間持続投与したSDRに、Dex単独投与、Dex+BCAA投与を行った。それぞれのラット骨格筋の全RNAシークエンスを行い、各mRNA量を比較検討した。RPKM2以上でBCAA処置により倍以上となったもの、あるいは1/2以下になったものを抽出した。この結果、25のmRNAが同定された。うち19では、GHの補充によりBCAAによるmRNA量に及ぼす効果が逆転していた。それらがコードするタンパク質の機能について解析中である。
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