研究課題/領域番号 |
26500022
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研究機関 | 産業医科大学 |
研究代表者 |
豊平 由美子 産業医科大学, 医学部, 准教授 (90269051)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | polyphenol / catecholamine secretion / tyrosine hydroxylase / transporter / acetylcholine receptor / Ca channel / Na channel |
研究実績の概要 |
メディカルハーブ成分でストレス軽減効果の有る予防薬や気分障害の治療薬として適用できるフィトケミカルを選定、評価する基礎研究である。カテコールアミン神経系へ作用するものを細胞レベルで同定し、動物実験系で生体における気分障害への影響を解析し、神経機能への有効性と作用機序等を多角度から検討していくことを目的としている。 昨年度、交感神経系機能のモデル系としての培養ウシ副腎髄質細胞とヒト神経芽細胞(SK-N-SH)やトランスポーターを発現させたHEK-293細胞等を用いてカテコールアミン神経機能に影響するフィトケミカルを選定し、本年度はこれらを用いて詳細な検討を行った。1. フラボンであるアピゲニンは濃度依存性(3 -100 μM)にイオンチャネルを抑制することにより、培養ウシ副腎髄質細胞におけるカテコールアミン(CA)分泌を抑制した。2.チロシン水酸化酵素活性を抑制したが、チロシン水酸化酵素のセリン31と40のリン酸化は促進した。その作用機序にERKが関与している可能性を示唆した。3.アピゲニンと構造が非常に類似しているルテオリンではイオンチャネルへの抑制作用は認められなかった。4.ルテオリンは濃度依存性(0.1 -100 μM)にチロシン水酸化酵素活性を抑制した5.レスベラトロールは抗うつ薬の標的であるノルアドレナリントランスポーターやセロトニントランスポーター機能を低濃度では促進し、高濃度では抑制した。この作用機序はトランスポーターへの直接的な阻害ではないことを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度の研究はおおむね計画に沿って遂行されているが、昨年度の研究の遅れが影響して動物実験に遅れが出ている現状である。本年度は神経系への効果が確認されたアピゲニンとルテオリンについて培養細胞と実験動物を用いた系でカテコールアミン分泌やチロシン水酸化酵素活性・リン酸化に及ぼす影響について生化学・薬理学的手法と行動薬理学を用いて検討を行った。昨年HPLCポンプの故障のため、HPLCを用いた検討に遅れが出ていた。HPLCを用いた測定を実施していた際に、新規購入した高速液体クロマトグラフィーのポンプと他の部分との連携に不具合が生じ、調整や条件設定に手間取り、脳内アミン量の測定に遅れが出ている。
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今後の研究の推進方策 |
平成26, 27年度に得られた結果を基にして、神経系への効果が確認されたフィトケミカルについて細胞レベルと実験動物を用いた系での行動薬理学と生化学的手法を用いて評価を行う。①細胞膜上のNAT, SERTをビオチン化し、細胞膜上の発現変動をWestern Blotting法により測定することで、作用機序を検討する。②培養ウシ副腎髄質細胞、神経芽細胞(SK-N-SH)や褐色腫瘍細胞(PC12)細胞を用いてERK, Akt, GSK3βはリン酸化抗体を用いてWestern Blotting法により測定し、PKC, cAMP, cGMP, IP3はkitにて測定し、作用に関与する細胞内シグナルを明らかにする。③大脳皮質、海馬、中脳における神経栄養因子タンパク質、mRNA量の変動を解析する。④マウスにおける脳内モノアミン量の変動を検討する。⑤対照群マウスと特定機能成分を腹腔内注射や経口投与したマウス群で 投与直後に行動解析を実施し、薬効を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
高速液体クロマトグラフィーのポンプと他の部分との連携に不具合が生じ、脳内アミン量の測定が実施できなくなったことから、脳内モノアミン測定に用いる予定であったマウスの購入予算が残っている。
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次年度使用額の使用計画 |
分子生物研究用試薬、Western blot用試薬、ELISAキット、放射性標識化合物、HPLC用試薬等の研究用試薬、実験動物購入と研究用器具の物品費、実験動物管理費と大学所有機器の使用料等のその他費、国際及び国内学会関係の旅費を計上する。昨年度の未使用の金額については遅れているマウス脳内モノアミン量測定のために用いるマウスの購入に追加配分する予定である。
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