研究課題
ヒトiPS/ES細胞を用いた心筋分化誘導系では、各種サブタイプ心筋が混在している。本年度は、これらの混在した心筋細胞集団の中から、それぞれのサブタイプ心筋を純化できる実験系の確立と、純化した各種心筋の解析、およびその再生医療あるいは創薬への応用を目標とした。具体的には、洞結節ペースメーカ細胞はHCN4イオンチャネルを、そして心室筋細胞はMLC2vミオシン軽鎖を指標に、選択的に分取・純化できるヒトiPS/ES細胞の樹立を試みた。そのために、(1)BACベクターを用いたセミノックイン法によって、HCN4発現を緑色蛍光タンパク質(GFP)で、(2)CRISPR/Cas9によるゲノム編集法によって、MLC2v発現を赤色蛍光タンパク質(mCherry)で、可視化できる二重改変ヒトiPS/ES細胞株の樹立に成功した。心筋を分化誘導後、FCMで解析すると、GFP陽性細胞が分化誘導後10日前後で、それより遅れ約1ヵ月後にGFP/mCherry二重陽性細胞が、続いてmCherry陽性細胞が観察されることが分かった。これら3種の細胞をセルソーターで分画したところ、予測どおり、GFP陽性細胞は、HCN4を特異的に発現し洞結節ペースメーカ型の電気生理学的特性を、mCherry陽性細胞は、MLC2v陽性の心室筋の特性を示した。また、将来の創薬への応用を目指し、純化したHCN4陽性細胞を用いて、各種イオンチャネルブロッカーに対する応答性を市販心筋細胞と比較検討した。その結果、薬剤として使用される生理学的濃度での反応性を確認することができた。このように、ヒトiPS/ES細胞の心筋分化誘導系から、生体の洞結節ペースメーカおよび心室筋細胞と同等のサブタイプ心筋を選別採取できる実験系の確立に成功した。これらの細胞解析は、途上であるが、創薬への展開などに有望であると考えている。
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