研究課題/領域番号 |
26501006
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研究機関 | 帝京科学大学 |
研究代表者 |
真先 敏弘 帝京科学大学, 医療科学部, 教授 (00585028)
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研究分担者 |
斉藤 史明 帝京大学, 医学部, 准教授 (40286993)
松村 喜一郎 帝京大学, 医学部, 教授 (50260922)
萩原 宏毅 帝京科学大学, 医療科学部, 教授 (80276732)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 間葉系幹細胞 / リプログラミング / 上皮間葉転換 / 腫瘍幹細胞 / ハンセン病原因菌 / ハンセン病 / 人工的幹細胞誘導法 |
研究実績の概要 |
本年度、Snai1導入IMS32(不死化マウスシュワン細胞、神経鞘腫細胞にも対応)の間葉系細胞形態への変化を確認し、EMT(上皮間葉転換)が誘導されたと考えられた。この細胞の幹細胞培地での培養により、sphere作成に成功した。このsphereを間葉系幹細胞用培地(StemCell Technologies)で培養したところ、活発に増殖した。さらにこの細胞を脂肪細胞分化用培地(StemCell Technologies)で3週間培養し、Oil Red Oで染色したところ、細かい脂肪滴を多数認める細胞が全細胞の30-40%出現していた。つまり脂肪細胞前駆細胞分化が誘導された。一方、control細胞(Snai1非導入IMS32)を直接幹細胞培地に入れることによって形成されたsphereを、Snai1導入IMS32と同様に脂肪細胞分化を試みたが、Oil Red O染色で脂肪滴を認める細胞は1%程度であった。一方、Snai1非導入IMS32由来のsphereを神経細胞分化培地で培養するとtubulin-ベータ3陽性の神経細胞様細胞が少数ながら出現した。以上の本年度の結果の主要な意義は次の3つである。 1 IMS32に神経幹細胞が含まれている可能性の示唆 2 IMS32へのSnail導入によるEMTの誘導 3 上記EMT誘導に基づく間葉系幹細胞様細胞の誘導 これらの結果は、ハンセン病原因菌のシュワン細胞リプログラミングの機序にEMTが役割を果たしているという仮説の証明、新しい人工的間葉系幹細胞誘導法開発の第一歩、神経鞘腫細胞がEMTによって腫瘍幹細胞を形成する可能性の示唆、といった点でハンセン病の病態解明、幹細胞による再生医療、神経鞘腫の悪性化の病態という少なくとも3つの医学研究分野に及ぶ重要性を持っている、と考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
IMS32へのSnai1導入によりEMTの導入に成功し、さらにsphere形成、脂肪細胞前駆細胞への分化を確認し、間葉系幹細胞様細胞が誘導できたことの意義は「研究実績の概要」に書いたように小さなものではない、と考える。またIMS32に神経幹細胞が含まれている、という予期せぬ発見もあった。しかし骨細胞、軟骨細胞への分化にまだ成功しておらず、multipotentな間葉系幹細胞を作成できた証明がまだできていない点、作成した間葉系細胞様細胞のトランスクリプト―ム分析が未実施である点、当初27年度に予定したマウスシュワン細胞の一次培養細胞の分析が未実施である点でやや遅れている、と自己評価する。
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今後の研究の推進方策 |
1 Multipotentな間葉系幹細胞誘導の確認:Snai1導入IMS32由来sphereの骨細胞、軟骨細胞、骨格筋細胞、平滑筋細胞などへのin vitro, in vivoでの分化能の解析 2 DNA microarrayによるSnai1導入IMS32由来sphereのトランスクリプト―ムの解析 3 Snai1導入IMS32の腫瘍幹細胞としての形質の解析:in vitroでの移動能力、anoikis抑制能、in vivoでの腫瘍形成能、血行性転移形成能、直接浸潤能などの解析 4 ヒト神経鞘腫細胞へのSnai1導入による腫瘍幹細胞誘導の試行 5 マウスシュワン細胞の一次培養細胞(すでに作成済みで凍結保存中)へのSnai1導入によるEMTおよび間葉系幹細胞誘導の試行 6 5の成功の後、ヒトシュワン細胞の一次培養細胞へのSnai1導入によるEMTおよび間葉系幹細胞誘導の試行
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次年度使用額が生じた理由 |
物品が一部予想より安く購入できたため、および実験遂行が予定よりやや遅れ、その分だけ予定の物品を購入していないため。
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次年度使用額の使用計画 |
他物品の購入、ないし未購入だが購入予定の物品の購入。
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