研究実績の概要 |
前年度、Snai1導入IMS32(不死化マウスシュワン細胞株)が間葉系幹細胞様細胞に変化したことを示唆する証拠を提出し、この細胞がoil red O陽性の脂肪細胞へ分化したことを報告した。これを受け、本年度は浮遊培養法による軟骨細胞への分化を試みた。しかしこの培地中で通常の間葉系幹細胞は一塊となって浮遊状態で培養できるのに対し、Snai1導入IMS32はこの培地中では一塊となって浮遊せず、浮遊させようとすると細胞がばらばらになってしまい、軟骨細胞への分化は不可能であった。以上からIMS32へのSnai1導入によっては間葉系幹細胞へのリプログラミングは不完全な形でしか起こらないと考えられた。 一方、Snai1導入を不死化細胞株ではなく、一次培養マウスシュワン細胞で行うべく、共同研究者のRambukkana教授にこの細胞を供与いただいた。この細胞に対するSnai1導入に成功し、Snai1導入一次培養シュワン細胞においてもIMS32と同様、間葉系の細胞形態への変化が見られ、Sphere形成能力も確認できた。しかしこの細胞の脂肪細胞への分化を試みたところ、oil red O陽性細胞への分化はほとんど見られなかった。このため、以前報告した独自の一次培養マウスシュワン細胞分離方法(Masaki et al., Cell 2013, Masaki et al., Methods in Molecular Biology, 2017 in press)に基づき、再度マウスシュワン細胞の分離を試みた。この際、十分量のシュワン細胞を得るまでに、培養皿のコーティング方法などでいくつかの試行錯誤が必要であり、最終的に十分量のシュワン細胞を得ることはできたが、この試みの中で時間を消費し、今回は新しく分離したマウスシュワン細胞へのSnai1導入実験を行うことはできなかった。
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