研究課題/領域番号 |
26501007
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
森山 博由 近畿大学, 薬学総合研究所, 准教授 (90581124)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | Notchシグナル / 解糖系 / 低酸素 / 間葉系幹細胞 |
研究実績の概要 |
本研究は、幹細胞の機能を亢進する分子機序としてのNotchシグナル/解糖系経路制御機構を解明するとともに、そのメカニズムを応用した新規間葉系幹細胞を創製することを目的とする。当該年度は、1. 低酸素培養hADMPCにおいて、Notchシグナルにより制御される遺伝子の同定のため、マイクロアレイより得られた網羅的遺伝子発現解析確認を実施し、糖代謝に関わる酵素関連遺伝子群を同定した。また、2.低酸素培養hADMPCにおいて、Notchシグナルを介して変動する代謝産物の探索のため、質量分析装置を用い代謝物質を解析する(メタボローム解析)を実施し、脂肪由来間葉系幹細胞におけるNotchシグナルおよび低酸素応答による代謝(経路)の制御経路を網羅的に解析することにより、Notchシグナルが制御する酸素環境下における糖代謝変動プロファイルを取得した。これらの結果をもとに、関連する糖代謝制御遺伝子やタンパク質および代謝物の発現解析や機能解析を実施し、低酸素応答下における脂肪由来間葉系幹細胞の新規の低酸素制御機構の存在をつきとめ、これらの知見についてはその概略をまとめ論文報告に至っている。 上述のように、Notchシグナルが制御するエネルギー代謝と、幹細胞維持機構との関連性を明らかにしようとする本研究は、基礎研究としても非常に大きな意義を持つと考えられる。当該年度に達成した脂肪由来間葉系幹細胞の増殖能・分化能亢進機序の一端を明らかにしたことは、より未分化性やある種の多分化能を有する幹細胞亜集団の同定の足がかりとなり、表面マーカー・細胞外基質・代謝経路阻害剤などの方法による濃縮・分離技術の創製へと繋がる可能が見いだせる。これにより、最良の再生医療用細胞資材への提供につなげ、再生医療分野に大きく貢献できるものと確信している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、脂肪由来間葉系幹細胞の低酸素培養下における ①Notchシグナルで制御される遺伝子の同定と未分化性維持・多分化性に関わるシグナル機構の解析、②低酸素環境下における新規解糖系機構の探索、③Notchシグナル系と新規解糖系シグナルクロストーク機構を応用した更に高品質なヒト脂肪由来間葉系幹細胞創製を目的とし、標的細胞・組織に高い指向性をもつオーダーメード再生医療用幹細胞資材提供を目指している。 当該年度では、上述①および②の研究目的の達成のため、(1) Notchシグナルにより制御される遺伝子の同定のため、マイクロアレイより得られた網羅的遺伝子発現解析確認を実施し、糖代謝に関わる酵素関連遺伝子群を同定したこと、(2) 質量分析装置を用いたメタボローム解析を実施し、Notchシグナルが制御する酸素環境下における糖代謝変動プロファイルを取得したことなど、研究計画に準拠した実験を実施し、かつ的確にデータを集積・分析できたことで十分な成果を得られたと結論づけられる。
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今後の研究の推進方策 |
当該年度の研究成果を受け、今後も研究計画に則し、1. 低酸素培養hADMPCにおいて、Notchシグナルにより制御される遺伝子の同定のための、遺伝子レベル、タンパク質レベルでの候補遺伝子の検証【27年度以降】、低酸素培養hADMPCにおいて、Notchシグナルを介して変動する代謝産物の探索のための、②遺伝子解析結果とあわせた脂肪由来間葉系幹細胞での代謝経路を同定【平成27年度以降】、3. 上記1, 2の探索によって得られた遺伝子・代謝経路による、増殖能・分化能亢進への関与とその機序の解明のための、①変動遺伝子による、増殖能・分化能亢進への関与とその機序を解明【平成27年度以降】および③ 脂肪由来間葉系幹細胞より増殖能・分化能の高い脂肪由来新規幹細胞の分離・創製および心筋や軟骨分化特異的な幹細胞創製への挑戦【平成27年度以降】を実施する。これにより、新たな分子メカニズムや幹細胞代謝ダイナミズムを同定することで、最良の再生医療用細胞資材の提供につながる基盤技術の開発を達成し、再生医療分野に大きく貢献したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度は研究計画に則し、主として分子生物学実験のための物品費を研究に充当し、研究計画の進捗に合わせて予算を消化した。
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次年度使用額の使用計画 |
研究計画にあわせて、的確かつ適正に予算を活用する。
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