研究課題/領域番号 |
26502001
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
朴 賢淑 岩手大学, 三陸復興・地域創生推進機構, 准教授 (10466518)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 移民者のケア / 高齢者プログラム |
研究実績の概要 |
H28年度は、福祉団体(NPO)による高齢者への学習支援とコミュニティーセンターによる福祉サービスへの展開に重点を置いた高齢者プログラムの現状について調査を行った。 豪州韓国人福祉会は、高齢者の学習支援事業に重点を置いており、特に、Healthy Ageing Service Program:HAP)に取り組んでいる。当プログラムでは、高齢者や介護者の社会参加を促すための学習プログラムの充実化や高齢者向けの情報提供を積極的に取り組んでおり、移住高齢者や介護者らが福祉サービスを積極的な利用を目指している。ここでは、①高齢者福祉サービスに対しての理解を促すこと、②高齢者や介護者が福祉サービスを利用する際の障害要因の把握と課題解決を図ること、③福祉担当行政職員らが韓国文化の理解を図ることによって、利用者のニーズにあったサービス提供を目指している。一方、Crows Nest Centreでは、地域住民に開かれた学習場の提供とともに高齢者福祉サービスを取り入れたプログラムも提供している。このプログラムは①コミュニティ・サポート、②ミールズ・オン・ウィールズ(食事宅配)、③コミュニティ・レストラン、④リネン・サービス、⑤ショッピング・アシスタンス、⑥インディビジュアル・トランスポート(送迎サービス)などを中心事業として行っている。近年、オーストラリアでは高齢者ケアをめぐって、経済的に困窮した高齢者への福祉サービスの提供とともに「在宅介護コミュニティーケア法」(HACC法)の制定(1985年)により施設から在宅へと大きく転換が見られている。今回の調査で注目した、コミュニティーセンターにおける事業展開が高齢者の教育から福祉事業へ拡大していた。また、福祉団体(NPO)による高齢者、身体障害者、その家族達のためのサービスの提供は、オーストラリアの高齢者支援の担い手として大きな役割を果たしていた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
近年、世界各地でIS(イスラム原理主義者)によるテロの多発はオーストラリアの移民政策にも影響を及ぼすこととなり、政治家らによる移民者を制限する動きも見え始めている。よって外国人による福祉施設調査において協力を得るには厳しい状況であった。 H28年度は、AUNITING Wesley Gardens Belroseniting.orgおよびCrows Nest Centre (クロスネストコミニティーセンター)MOSAIC Multicultural Centreにおける高齢者を対象にした学習プログラム調査および施設の見学にとどまっており、職員へのインタビュー調査が不十分であった。
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今後の研究の推進方策 |
1990年初めからのオーストラリアの経済的不況に伴い国民健康保険制度の縮小とともに高齢年金受給開始年齢の引き上げが進められた。特に戦後のベビーブーマーの引退を前に、年金や退職金、高齢者介護支援に限界が見え始めた。こうした先住オーストラリア人の高齢化をめぐる問題に加え、非英語系移住者の高齢化が課題とされた。特に非英語系移住者の場合、生活習慣、宗教、言語、食事、文化などの面において介護施設で介護者と被介護者の間に摩擦が生じやすい。よって、非英語系移民者の高齢者に対するエスニック・コミュニティーによるケアが求められる一方で、この問題はオーストラリア政府においても課題とされている。 よって次年度は、韓国人によって運営されている老人ホームの調査を進めるとともに、AUNITING Wesley Gardens Belroseniting.orgで移民者でありながら介護職員として働いている人を対象にインタビュー調査を行う。 また、報告書としてまとめるために、①オーストラリアにおける移民者への福祉政策の展開、②エスニック福祉施設の役割、③介護・福祉士のキャリア形成と職業訓練などを異文化間介護の視点から検討し、提言を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
28年度の調査においては、介護施設の調査や介護福祉士のキャリア形成についてインタビュー調査を計画し進めてきたが、依頼した機関との日程調整が厳しい状況だったこと、また、調査依頼内容について先方との意見調整ができず、年度内に調査を終えることができなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
調査先と信頼関係を構築し、研究調査に対する理解を得て研究遂行するため、先方と定期的な情報共有を行う。
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