老人福祉施設等での入浴介助では、転倒や溺水などの事故が発生すると、命に関わる重大事案となる危険性が高い。そこで、実際の入浴介護現場の入浴介助場面をプライバシーに配慮して撮影し、得られた映像を複数の専門職にヒアリング調査することで危険箇所の調査を実施した。その結果、期間箇所の特徴は8つのケースに類型化することができた。また、これらの特徴を整理すると、入浴介助者の視野方向や介助者同士のコミュニケーションなど、危険発生の要因が明らかになった。 また、浴室は転倒のリスクが高いため、集中力の持続が要求され、精神的負担が高くなる。転倒や溺水などの事故を未然に防ぎ、介護者の精神的負担を軽減することは重要な課題である。そこで、モーションセンサに着目し、入浴介助中の視線・視野情報を推定し、入浴介助中の視線行動パターンを明らかにすることを目的とした開発をおこなった。モーションセンサとしては、3軸加速度、3軸角速度、3軸地磁気、GPSから構成される小型センサを被験者に固定して1kHzでデータを収集した。その結果、得られたモーションセンサによる推定方向とターゲット座標の値の推定精度を検証したところ、最大で16度程度の誤差はあったが、90%以上の時間では10度以内に推定できており、高い推定精度であることが確認できた。さらに、ターゲットの動きが秒速1.5m程度では15度の誤差が生じたが、秒速1mを下回る速度では10度以内であった。入浴介助等のゆっくりとした動作であれば10度以内の推定精度であると確認できた。 以上より、類型化された危険状況に応じた回避方法のマニュアルの作成が可能となり、また、推定誤差が発生しやすい動作や推定誤差が発生しやすい身体の向き等を明らかにすることができたことから、モーションセンサを用いた危険評価システムを導入することで、安全な入力介助システムとして提案できる可能性が確認できた。
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