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2015 年度 実施状況報告書

健康リスクに向き合う人々の多様な生と〈ケアのコミュニティ〉の記述の試み

研究課題

研究課題/領域番号 26502004
研究機関東北大学

研究代表者

大北 全俊  東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (70437325)

研究分担者 横田 恵子  神戸女学院大学, 文学部, 教授 (50316022)
新ヶ江 章友  大阪市立大学, 人文社会系研究科, 准教授 (70516682)
研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2017-03-31
キーワードケア / 哲学 / 社会福祉 / 文化人類学 / 外国籍住民 / MSM / HIV/AIDS
研究実績の概要

本研究は、多様であると考えられる、人々の〈健康〉な生と、リスクの個人化による画一化との相克を、調査および理論の両者により明示すること、そしてケアのあり方によってその多様性をサポートしうることを示すことによって、人々の多様な〈健康〉を支援する〈ケアのコミュニティ〉の可能性を提示することを目的としている。
対象としてしているのは、HIV感染症のリスクの高いMSMと外国籍住民、および両者を支援している人々である。
昨年度に引き続き、外国籍住民については、主たる研究分担者の横田によって、NPO法人のCHARMの協力を得ながらフィリピン国籍の住民に対する調査を実施し、ある程度の分析を終えることができた。医療アクセスの実態および抱えている困難について一定の見地を得ることができ、横田によって論文にまとめられた。
また、横田は同時に、HIV感染症のカウンセリングが持つ意味について、文献に基づき歴史的にひもといていく作業に移行し、代表の大北と共著で論文にまとめた。カウンセリングの日本への導入から振り返りつつ、「エイズ・カウンセリング」の誕生とその変遷を総覧し、医療におけるカウンセリングが持ちうる政治性と可能性について明確にした。
HIV感染症のリスクのあるMSMに関する研究は、同じく文献調査に基づいて遂行することとした。海外での文献も視野に入れつつ、日本での様々な種類の資材(パンフレットや報告書など)の調査に着手しはじめた。これは主に研究分担者の新ヶ江と進めている。
理論研究については、引き続き政治哲学に関する文献研究を遂行し、なかでも、human rightsやsocial justiceを主たる概念として研究を遂行し、それらとHIV/AIDSなどの健康課題、またヘルス・プロモーションといった施策との関連性について研究し、論文化を進めている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

外国籍住民調査については、調査を終了し、分析についてもある程度終え、論文化まで進めることができた。
また、HIV感染症のカウンセリングに関する研究も論文化を終えることができた。
また理論研究についても、まだ途中ではあるが、論文化作業を進めつつある。
以上については、今後さらなる分析をふまえて研究を展開する必要があるが、現時点では予定通りに進んでいると考えている。
ただ、MSM調査については、その方法について模索する期間が続いており、論文化にまでは至っていないため、この点についてはやや遅れているものと考えている。

今後の研究の推進方策

28年度の予定として外国籍住民調査については、調査に協力していただいたNPO法人やその関係者に対するインタビューなどに基づき、ケアに関わる人たちの記述を行う。
またカウンセリングという支援の政治性についての研究は、文献調査に基づき継続して遂行する。
MSMの研究については、27年度にピックアップした文献や資料の読解を継続し、そこからHIV/AIDSのリスクを抱える人たちの生のあり様の記述を試みる。
理論研究については、human-rights概念に関する研究を主に、これも歴史的な経緯を追って研究を遂行する予定である。

次年度使用額が生じた理由

おおむね予定通りに研究および調査を実行できたが、当初の見込みと実際の調査対象者数やそれにかかる費用等に差が出たこと、またMSMにかかる研究でやや遅れが生じたことなどが要因である。

次年度使用額の使用計画

調査の実施、研究会の開催、文献調査や理論研究の遂行等にかかる費用に充当する。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2016 2015

すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] 「HIV/AIDS カウンセリング」概念の軌跡 ――1990年代の心理カウンセリングの政治性とHIV/AIDS医療とのかかわりから2016

    • 著者名/発表者名
      横田恵子 大北全俊
    • 雑誌名

      臨床哲学

      巻: 17 ページ: 53-76

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Ethical Obligations in the Face of Dilemmas Concerning Patient Privacy and Public Interests: The Sasebo Schoolgirl Murder Case2016

    • 著者名/発表者名
      Yasuhiro Kadooka, Taketoshi Okita , Atsushi Asai
    • 雑誌名

      Bioethics

      巻: 30-4 ページ: 1-8

    • DOI

      10.1111/bioe.12249

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 病院における倫理支援と病院内倫理委員会ーーある病院の委員会活動記録からーー2016

    • 著者名/発表者名
      服部俊子 芥川茂 大北全俊 樫本直樹
    • 雑誌名

      先端倫理研究

      巻: 10 ページ: 71-89

    • 査読あり
  • [雑誌論文] ダイバーシティ推進とLGBT2016

    • 著者名/発表者名
      新ヶ江章友
    • 雑誌名

      地域活性化ニューズレター

      巻: 10 ページ: 2-5

  • [雑誌論文] 外国籍住民の医療アクセス実態が示唆する文化障壁の諸要因:滞日 フィリピン語コミュニティに対するパイロット調査から2016

    • 著者名/発表者名
      横田恵子
    • 雑誌名

      神戸女学院大学「論集 」

      巻: 63-1 ページ: 印刷中

    • 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] がん患者遺族とのかかわりを通して生成する中堅看護師たちの卓越 ・固有感覚:がん認定看護師たちの語りから2015

    • 著者名/発表者名
      横田恵子
    • 雑誌名

      神戸女学院大学「論集」

      巻: 62-2 ページ: 246-261

  • [学会発表] Reproductive Medicine and the Homosexual in Japan (Panel ‘Technologies of Gender/Sexuality and Problematization of Human Ontology in Japan’)2015

    • 著者名/発表者名
      Akitomo Shingae
    • 学会等名
      26th JAWS(Japan Anthropology Workshop) Conference
    • 発表場所
      Bogazici University(Istanbul, Turkey)
    • 年月日
      2015-09-03 – 2015-09-03
    • 国際学会
  • [学会発表] 日本におけるエイズの言説と差別―ジェンダー・セクシュアリティ・ナショナリズム2015

    • 著者名/発表者名
      新ヶ江章友
    • 学会等名
      大阪市立大学・済州大学校学術交流協定締結2周年記念国際シンポジウム 「マイノリティと人権」
    • 発表場所
      済州大学学校(済州、韓国)
    • 年月日
      2015-05-19 – 2015-05-19
    • 国際学会
  • [図書] 少子超高齢社会の「幸福」と「正義」 倫理的に考える「医療の論点」2016

    • 著者名/発表者名
      浅井篤 大北全俊 編
    • 総ページ数
      212
    • 出版者
      日本看護協会出版会

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公開日: 2017-01-06  

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