研究実績の概要 |
最終年度は、海外の外国人看護師に関する調査によって明らかになったことと国内の外国人(フィリピン人)ケアワーカーの聞き取りデータの分析で明らかになったこととをまとめ、国内で今後どのような支援を行なっていくべきかという提言をまとめた。その一部として、在米フィリピン人看護師の聞き取りデータの現象学的分析を、平成28年9月18日(日)に名古屋外国語大学で行われたSociety for Intercultural Education, Training, and Research, Japan(異文化コミュニケーション学会)の年次大会で、『在米フィリピン人看護師の異文化適応経験』として発表した。これまでの国内のフィリピン人看護師の経験の分析では、聞き取り対象者の日本滞在歴が短かったため、日本語の習得という高い壁に阻まれて文化的な問題が見えていなかった。また、長期的な適応経験の分析もできていなかった。そこで、言語の障壁が無いケースとして、在米フィリピン人看護師の異文化適応の分析を行った結果、もともと文化的多様性の高いフィリピン人看護師にとっては、多様性の高い環境(例:ニューヨーク)には適応しやすく、多様性の低い環境(例:アメリカ中西部の小都市)では適応に困難を伴っていたことがわかった。つまり、フィリピン人看護師が異文化に適応していく上では、どこの国かはあまり関係なく、適応すべき環境が文化的に多様であるかどうかが重要な要因だったのである。さらに、フィリピン人看護師は、フィリピン流のケアはどこの世界でも受け入れられると自負しており、必ずしも受け入れ国の看護を学ぶために働いているわけではないということもわかった。以上のことをふまえると、文化的多様性の低い環境の日本で、同化を強制しないやり方で、どのように外国人看護師を支援していくべきか模索することが今後の課題であると言えるのではないだろうか。
|