ケアラー支援には、アウトリーチ型支援(届ける支援)により潜在的ニーズを発掘し早期支援につなげる個別支援と、ケアラーも含めた家族全体の日常生活支援を地域づくりとして行うことでケアラー世帯と地域をエンパワーする予防的支援の2つのアプローチとその包括化が必要である。本研究の目的は、先駆的実践を行う岩手県花巻市、北海道栗山町の事業評価を行い、それをふまえて包括的なケアラー支援モデルの構築を図ることである。 平成28年度は、花巻市調査では、平成27年度在宅介護者等訪問相談記録 (661件)の収集・分析を行うとともに、23~27年度訪問相談記録を対象に3年度以上に渡り訪問している94事例について介護者のニーズと支援の効果を分析し、自治体及び社会福祉協議会職員と意見交換を行った。栗山町調査では、平成24~27年度ケアラー手帳配布世帯訪問記録(995件)によりケアラーの特徴と困り事を整理・分析し、社協職員と意見交換を行った。ケアラー支援の国際的取り組みを把握するシンポジウムも開催した。 その結果、主に、第1に、アウトリーチ型支援の5つの効果(介護者の心理的ストレスの軽減、孤立予防、社会参加、エンパワメント、サービス利用につながる)が把握できた。第2に、介護者のかかえる9つのニーズ(被介護者の支援、サービス利用、医療・介護サービスを含む生活全般に関わる情報提供、介護者の健康の保持・増進、介護者の社会とのつながり、家族関係の調整、経済的問題への対応、近隣との関係支援、緊急時・今後の不安対応)が明らかとなった。第3に、これらのことから生活の場での支援を可能にするアウトリーチ型支援は介護者に有効な支援であることが示唆されたことは意義がある。 なお、今年度の研究も、連携研究者(鈴木奈穂美専修大学准教授、松澤明美茨城キリスト教大学准教授、山口麻衣ルーテル学院大学教授)との緊密な連携のもとに実施した。
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