研究課題/領域番号 |
26503001
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
佐藤 雪野 東北大学, 国際文化研究科, 准教授 (40226014)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 民族共生 / チェコスロヴァキア / ナショナリズム / マイノリティ / 土地改革 / 大土地所有 / 利益団体 / 貴族 |
研究実績の概要 |
戦間期の中東欧諸国で最後まで議会制民主主義を維持したチェコスロヴァキアの終焉の原因となったのは、ナチ・ドイツによる外圧に他ならないが、その背景には国内の民族問題があった。建国から国家解体に至るまで、最大の問題となったのはドイツ系住民の処遇であった。なかでも、ドイツ系大土地所有者は、数の問題ではない「マイノリティ」=劣位に置かれた民族であり、社会的不平等の体現者として白眼視され、土地改革のターゲットとなった。土地改革関連法自体には、文言上の民族的条項はないものの、解釈によって民族的な有利不利が介入する余地があった。そのため、ドイツ系大土地所有者は、ドイツ大土地所有者連盟とチェコスロヴァキア大土地所有者連盟、モラヴィア大土地所有者連盟といった大土地所有者の利益団体を活用しつつ、ハプスブルク時代からの法律事務所の助けも得て、自らの利害を守ろうとした。その時には共通の利害を持つ者として同盟を通じてチェコ系の大土地所有者とも協力した。大土地所有者の多くは旧貴族であり、貴族としての連帯も、超民族的協力に役立った。 以上の一部について、日本西洋史学会大会及び、国際中欧・東欧研究協議会ICCEES大会において報告し、ICCEESにおいては、関連分科会も組織し、海外研究協力者のEmil Voracek氏(チェコ科学アカデミー歴史学研究所上級研究員)のコメントと関連発表も得た。 また、前年度に引き続き、チェコ・プラハの国民文書館で行った史料調査では、チェコスロヴァキア大土地所有者連盟の他、大土地所有者の代理人となった法律事務所、土地改革の対象にはならない規模の自営農団体の史料を収集、検討した。そのほか国民図書館で同時代文献の閲覧を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実施計画に即し、ICCEESでの分科会Multinational and Multicultural Co-existence in Central Europe in the First Half of the Twentieth Centuryの組織、報告"Cooperation among Multinational Large Scale Landowners of Inter-War Czechoslovakia: Interest Organizations and Nationalism"を行った。加えて、海外研究協力者Emil Voracek氏の来日を仰ぎ、ICCEESでのコメント、関連報告を得、それ以外にも助言、討論の場(研究会)を設けることができた。 また、日本西洋史学会での報告「チェコスロヴァキア第一次土地改革における準拠法―民族的視点と社会的視点―」も実現できた。 現地補足調査では、国民文書館で、大土地所有者連盟以外の史料も収集でき、新たに発見した同時代文献も国民図書館で閲覧した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに収集した資・史料の検討を続けると同時に、これまでモラヴィア邦文書館でしか行えなかった地方の大土地所有関連史料の収集をなるべく早い時期に行う。モラヴィア邦文書館以外の地方での史料収集場所は、訪欧日程と開館日程及び史料の公開状況を検討して、南ボヘミアのトゥシェボン国立地方文書館、東ボヘミアのザームルスク国立地方文書館、南モラヴィアのズノイモ国立郡文書館、ブジェツラフ国立郡文書館(在ミクロフ)などの候補から選択する。 それらの史料と、学会発表や研究会などの議論をふまえ、更に研究会での発表を行いつつ、研究成果を論文にまとめ、学術雑誌等に投稿、公表する。 また、今後の研究課題の展開についても考察する。
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次年度使用額が生じた理由 |
文書館、図書館での資・史料収集が、デジタルカメラによる撮影が許可されたため、史料複写費がかからなかったことや、外国語による発表原稿のための校訂費用がかからなかったため。また、地方文書館での史料収集の一部を次年度に延期したため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度のなるべく早い時期に地方文書館での史料収集を実施し、研究成果に取り入れる。
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