研究課題/領域番号 |
26503002
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
和泉 浩 秋田大学, 教育文化学部, 准教授 (40361216)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 社会学 / 聴覚文化 / 芸術音楽 / 視覚文化 / モダニティ / ウェーバー / 音楽社会学 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は以下の2点である。(1)西洋近代の「芸術音楽」を題材に、音楽社会学、近年国外で発展しつつある聴覚文化論やサウンド・スタディーズ、ノイズに関する研究、新しい音楽研究の研究成果を取りいれ、近代(モダニティ)の芸術と音・聴覚、社会との関係を明らかにする。(2)近年の音楽や聴覚文化の研究をふまえ、応募者のこれまでの研究を発展させ、マックス・ウェーバーの音楽社会学(芸術社会学)の再検討を行う。 平成26年度は、近年の聴覚文化論、サウンド・スタディーズ、ノイズの研究、音楽研究、視覚文化についての国内外の文献や論文などの資料を収集し、聴覚文化に比べて研究が進展し、多彩な議論が行われている視覚文化論などの研究をもとに、聴覚文化論の展開について研究を行った。 聴覚文化に関する研究はこんにち、特に海外においてかなり盛んに行われるようになっており、音に関する多様なテクノロジー、身体としての耳、音と聴取をめぐる社会的・歴史的・文化的状況や思想(家)などについて、さまざまな時代と国、地域についての詳細な事例研究が数多く生み出されている。しかしその一方で、聴覚を問題にすることの視点と意義について、視覚中心の近代と学問にたいする批判、身体(感覚)と精神(理性)、「聞くこと」と「聴くこと」に関する二元論の問題化といった点で論じられており、いずれも重要な点とはいえ、聴覚を問題にすることで近代性(モダニティ)の何が明らかになるのか、またいかなる視点を提示できるのかといったことが十分に明らかにされていない。さらに聴覚と社会、文化を問題にする上での方法論的視角も(方法論的視角が「視角」であることの問題性も含め)不十分な状態にある。近代の合理化(理性)についてのマックス・ウェーバーの社会科学と芸術社会学の方法論などについて再検討することで、こうした点を明らかにすることが27年度以降の本研究の課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
26年度は、本研究のはじめの年度として、近年の音楽と聴覚についての研究状況を集中的に整理し直し、本研究が最新の研究成果をふまえ、それを発展させた研究となるようにすることを目的とした。 研究を進めていく過程で、音のなかでも芸術音楽という近代西洋の特定の対象に限定したとしても、聴覚についての研究が当初想定していたより多くの領域、多くの問題にかかわることがわかり、こうした点についてまだ十分な整理を行うには至っていないが、さまざまな領域と問題、そしてそれらについての視角とのかかわりを見いだせたことは、本研究を進めていく上で大きな成果であった。交付申請書での計画に記したように、27年度からは研究成果を論文としてまとめ、公表していく。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の推進の上で最大の課題は、大学での教育、管理運営等の業務のなかでいかに研究時間を確保できるかにある。授業期間中は授業内容を本研究に関連させるなどして、本研究を推進していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
十分に余裕を持って注文していた洋書が発売延期となり、年度内に入手できなかったため、次年度使用額9053円が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
上記の洋書は注文中のままであり、次年度使用額はその購入額にあてる。
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