研究課題/領域番号 |
26503013
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研究機関 | 明治学院大学 |
研究代表者 |
石原 俊 明治学院大学, 社会学部, 准教授 (00419251)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 硫黄島 / 北硫黄島 / 小笠原諸島 / 社会学 / 歴史社会学 / 強制疎開 / 地上戦 / ディアスポラ |
研究実績の概要 |
本年度は勤務先から特別研究(サバティカル)を取得し、まず4月から9月にかけて、本土各地で存命中の硫黄列島旧島民一世を対象としたインタビュー調査を、「全国硫黄島島民の会」と協働して集中的に展開した。特筆すべき成果は、1944年の硫黄列島全島強制疎開の対象から除外され、軍務に動員され、地上戦に巻き込まれながら生き延びた10名の生還者のうち、最後の存命者となったS氏に、直接聴き取りを実施できたことである。 また6月には、小笠原村が主催する旧島民および戦没者遺族を対象とする硫黄島訪島事業に特別に参加を許され、全島が自衛隊の管轄下にあるために民間人が原則として上陸できない同島を、初めて訪問することができた。戦没者慰霊祭や戦跡巡礼に参加したほか、旧島民が強制疎開前の自宅跡を確認・訪問する場などにも立ち会うことができた。この訪島事業参加記録に基づき、『現代思想』2015年8月号(「戦後70年」特集号)に「解除されない強制疎開―「戦後70年」の硫黄島旧島民」を寄稿した。 さらに硫黄島訪島の帰路、1週間にわたって小笠原群島の父島に滞在し、強制疎開前の北硫黄島での生活経験をもつ数少ない存命者であるY氏に、直接聴き取りを実施することができた。 10月以降は勤務先の在外研究費を受給して米国加州ロサンゼルスに滞在し、UCLA客員研究員として研究活動に従事した。この期間は本科研費補助金を直接使用しての活動ではないものの、3月にUCLAテラサキ日本研究センターが主催するワークショップにおいて、“Genealogy of Sovereignty and Archipelagos: Rethinking the Ogasawara Islands and the Iwo-jima Island in the Trans-Pacific World”と題して、本研究課題と密接にかかわる内容の報告をおこなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は勤務先から特別研究(サバティカル)を取得し、教育業務と校務のほとんどを免除されたため、本研究課題に集中的に取り組む時間を得ることができた。特に「全国硫黄島島民の会」と協働して、硫黄島の地上戦に動員された島民や、北硫黄島での生活経験をもつ島民といった、貴重なキーパースンを対象にインタビューを実施できたことは、本年度の特筆すべき成果であった。また本年度末には「島民の会」が小笠原村の補助金を受給して、一般向けの硫黄列島民に関する通史である『硫黄島クロニクル―島民の運命(さだめ)』(夏井坂聡子・著/石原 俊・監修)を執筆・発行したが、このプロジェクトに監修者として全面的に協力し、ぶじ年度内の刊行にこぎつけることができた。このように、本研究課題のアウトリーチに関しても、本年度は特筆すべき成果を得た1年であった。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は勤務先の通常業務に復帰するため、本年度と同水準のインテンシブな調査活動を実施することは難しいと思われる。だが、本年度9月に「全国硫黄島島民の会」の総会に招聘され、その場で多くの旧島民一世と知り合うことができたことから、次年度以後も複数の新しいインタビュイーに聴き取り調査を実施できる見込みである。また、米国の大学出版会から発行予定のアンソロジーに、硫黄島の地上戦と「戦後」に関する論文を寄稿する計画も進んでいる。限られた研究時間のなかでこうした計画を着実に前に進めていくことが必要であると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は勤務先から特別研究(サバティカル)を取得し、9月末から3月末日まで米国に滞在していた。3月の帰国準備期間は多忙をきわめたため、本研究課題にかかる経費の一部処理手続きが遅延し、若干の次年度使用額が生じてしまった。
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次年度使用額の使用計画 |
上述のように、次年度使用額が生じたのは研究課題遂行上の問題に起因するものではなく、やむをえぬ事由による経費処理手続きの遅延という技術的問題によるものであるから、次年度使用額分は2016年4月のうちに経費処理手続きを申請する予定である。
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