本研究は、硫黄列島(火山列島)に居住していた人びとの「近代経験」を、主に歴史社会学的な方法論によって明らかにした。硫黄列島(かつての有人島は硫黄島と北硫黄島)は、小笠原群島などに続いて、近代日本における初期の「南洋」植民地のひとつとなり、プランテーション型入植地が形成されたが、アジア太平洋戦争で日米戦の最前線に置かれたために住民が強制疎開または軍務動員の対象となり、住民たちは敗戦後も現在まで故郷喪失・離散(ディアスポラ)状態に置かれてきた。本研究は、こうした境遇を強いられてきた硫黄諸島民がいかなる「近代」をくぐり抜けてきたのかを、文献資料収集とインタビュー調査に基づき分析した。
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